コントレイルとは?

日本競馬を席巻し、多くのファンの記憶に鮮烈な印象を残した一頭の競走馬、コントレイル。
無敗の三冠馬という偉業を成し遂げた彼の現役時代の輝かしい成績と、見る者を魅了した走りの特徴は、種牡馬としてのポテンシャルを考察する上で避けては通れない出発点である。
ディープインパクトの晩年の傑作として2017年に生を受けたコントレイルは、その血統背景に違わぬ傑出した能力をデビュー前から示していた。
新馬戦を圧勝すると、続く東スポ杯2歳ステークス(GIII)、ホープフルステークス(GI)でもその素質の片鱗を見せつけ、無傷の3連勝で2歳シーズンを終えた。
そして迎えた2020年、3歳シーズン。コントレイルはまさに飛ぶ鳥を落とす勢いでその真価を発揮した。
皐月賞(GI)では、中山の御法度とも言える3角まくり大外一気。父ディープインパクトを彷彿とさせる競馬で、着差以上の圧勝だった。
続く日本ダービー(GI)では、サリオスに照準を合わせたような競馬で、直線でサリオスとの一騎打ちになるかと思われたが、後続を寄せ付けない圧巻の走りで二冠を達成した。
そして、菊花賞(GI)では、明らかに適性外の3000m。コントレイル一本にマンマークをしたルメール・アリストテレスコンビが常にプレッシャーを与え続ける中、史上3頭目となる無敗のクラシック三冠を達成。これは、父ディープインパクト以来の快挙であり、コントレイルの卓越した能力と神話性を世界に知らしめるものであった。
彼の走りの特徴として特筆すべきは、そのしなやかでいて力強いフットワークである。類稀なる瞬発力とパワーを兼ね備え、特に直線での加速力は見る者を圧倒した。また、レース運びの上手さも光り、どのような展開にも対応できる器用さも持ち合わせていた。これらの特徴は、単にスピードやパワーに優れるだけでなく、高い競馬センスの証でもあった。
次章では、この偉大な競走馬の血統背景に深く切り込み、種牡馬としてのポテンシャルを多角的に考察していく。
種牡馬としてのコントレイル

コントレイルは圧倒的なスピードとキレとパワーで無敗の三冠を達成した。まずはその元となった血統を分解していきたい。
パワーとキレとスピードの三点倒立!?
コントレイルはディープインパクトのニックスの詰め合わせである。
超簡単に言うと…
・母父Unbridled’s Song
ディープインパクトと非常に相性の良い米国血統馬。
現役時代は2歳でBCジュヴェナイルを勝利し、卓越した早熟性を見せつけた。

血統面で見ると、CequilloとIncantationがサーアイヴァーと相似インブリード。
サーアイヴァーはディープインパクトのキレの基になった馬であり、ここを刺激することはディープインパクト系の分かり易い二ックスになっている。
詳細は以下の記事参照。
また米国のダート馬ではあるが、CequilloとIncantation以外も芝的なポイントが多く、Unbridled’s Song自身の日本での産駒成績は芝32勝に対しダート33勝とほぼ拮抗しており、日本芝的なスピードとキレを併せ持つ。
加えると、父母父ルファビュリュー(Le Fabuleux)がディープインパクトの欧州的底力を支えるバステッド(Busted)と共振する二ックス。
Unbridled’s Song自身は米国的な早熟性とスピード&パワーの馬ではあるが、ディープインパクトと合わさることでキレと底力を増強させていた。
・母母母父Storm Cat
Storm Catも強烈な二ックス。
むしろディープインパクトといえばこちらを思い浮かべる方も多いだろう。
キズナやダノンキングリー、ラヴズオンリーユーにリアルスティールなど枚挙にいとまがない。
こちらもStorm Catの母とサーアイヴァーが相似の関係であり、キレとともに米国のスピードとパワーを注入したのがニックスの根拠。
ディープインパクト自身は欧州ステイヤー的な要素が非常に強く、そのままだと鈍足非力になりがち。
そこで、欧州型と親和性があり、スピードとパワーのある米国型を足すのがベターであり、それこそがUnbridled’s SongとStorm Catである。
だからこそ、キレ勝負になる東京競馬場で強く、2歳G1を取れるほど早熟で、最も苦戦したのが長距離の菊花賞や欧州的馬場だった大阪杯であったことはわかりやすいだろう。
コントレイル産駒の6月の戦績と傾向予想
血統構成的には、重厚な欧州血統の父と、欧州要素はありつつも実際はゴリゴリの米国型の母。
血統ニュアンス的にはスワーブリチャード(母父Unbridled’s Song)より米国感の強いキズナ(母父Storm Cat)がイメージに近い。
特にコントレイルの母は、父も母も米国2歳王者のため、2歳からでもバンバン走ってきそうだが、2025年6月30日現在、8頭出走して最高着順は3着。勝ち馬は出ていない。
もちろん判断するには時期尚早だが、これほどの種牡馬なら牧場も早期デビュー・早期勝ち上がりを意識するはずであり、異常事態の予兆はある。
また、なにより特筆すべきは上がり最速が一度もないことである。
父の末脚、特に2歳で見せた東スポ杯での末脚をイメージすると、スローの新馬で上がり最速がいないのはあまりにもおかしい。

そう思い、複数のクラブ募集されているでコントレイル産駒の歩様を見たが、なるほど確かに、少しパワー感が強い。
他の馬と比較するともちろん良い馬は多いのだが、父同様にディープインパクトを米国血統で魔改造したような、やや米国感が前に出てきてしまっている印象を受ける。(本来であればそれがバランスが良いということだが…)
この事から、しっかりと欧州的な母でディープインパクト的な”揺れ戻し”を行わないと、気を抜けば鈍足でダート馬のニュアンスが表にでてきてしまうのではないかと思われる。
現に、新馬を走った8頭を分解すると
・母父米国型 … 7頭
・Fappiano または Storm Catクロス … 5頭
・サーアイヴァー持ち … 0頭
このように、米国血統を強調し、キレを足していない馬が多いことが解る。
これは「キズナ産駒が走らない」と言われていた時と重なる印象であり、もしその印象が当たっているのであれば、キズナ配合をトレースしたほうが良いのではないかと考える。
馬券的狙い目
血統面を考えれば、間違いなく新馬戦こそ買うべき種牡馬である。
コントレイルの母方の祖父母は共に米国2歳王者であり、自身も2歳王者なのだから、産駒は2歳で輝くのは必然。
現在パッとしないのは、デビュー産駒の母系がパワーに寄った米国系ばかりであり、キレのないダート感のある産駒が多いからだと推察する。
今後この馬たちもダート替わりすれば弾ける可能性はあるし、今後出てくる母欧州系、特にサーアイヴァーを持った産駒は芝の中距離で爆発する可能性は高い。
なお米国系でもティズナウはサーアイヴァーの変わりになるため芝マイル~中距離で注目したい。
馬券ポイント✅️
・2歳戦でこそ買い
・母の傾向で産駒も変わる(キズナ的なイメージ)
・ダート変わりで激走も
・ティズナウは熱い可能性
・芝で買うなら母欧州系(かつサーアイヴァー持ち)
一口馬主的狙い目
基本は母欧州型。
特に、コントレイルは基礎的なポテンシャルは非常に高いものの、底力(≒体力・メンタル)血統が不足しているので、それを補充できるのがハイペリオンなどの欧州型というわけだ。
わかりやすく底力を補充するなら、ハービンジャー。
スワーヴリチャードでもレガレイラ・アーバンシックが成功しているのは重要なサンプルだ。。
血統面でもサーアイヴァー・ハイインローを持ち、血の濃いコントレイルを中和できる血統の持ち主。
また、キズナと同じくサーアイヴァー成分を補強したいので、ディープボンドのようにキングヘイロー(ダンシングブレーヴ)も注目したい。
また、狙ったように多くいるティズナウ持ちも大注目。
また、パワー方向に持って行くなら、フジキセキやキンシャサノキセキも面白い。(アンブライドルドの母≒フジキセキの母)
爆発力は高くないかもしれないが、堅実に勝つ産駒は多く出そう。
また、ダートに向く可能性も上がる。
あとはシンプルに底力を支えるのであれば、サドラーズウェルズ。
後はスワーヴリチャードとの大きな違いであるナスルーラ的なスピードとキレを足したいので、ミルリーフやリヴァーマンのクロスを持つ母から大物が出てきそう。
一口馬主ポイント✅️
・母父欧州系
・ハービンジャー・サドラーズウェルズ・サーアイヴァー・ティズナウに注目
・キズナ配合的にはカーリアンも要チェック
・ストームキャットやファピアノを配合してダートの大物
まとめ
何より、SSS級の繁殖と配合されているのだから、繁殖の質から言っても大コケはしないことは確約されている。
産駒も父に似て優等生な馬体・歩きの産駒が多く、逆に差が見つけづらい。
産駒の配合をざっと見たが、北米インブリード(Fappiano・Storm Cat・In Reality)を試す群と、欧州血統群に二分されており、また同じような配合でも母父を被らないようにしている印象を受けた。まさに初年度。
この中から二ックス配合が見つかれば血統的な偏りも出てくるが、血統愛好家はとしてはこの中から当たりを見つけるのが一番楽しい。
現状では産駒成績が奮っていないが、あれだけ揶揄されたレイデオロも重賞馬を何頭も出しているように、一定以上の成功を収めるであろう。
特に産駒が欧州変わりしたときに、真の真価を見せると思われる。
また、現状はやや非力や貧弱さを指摘される産駒も多いようで、体質的な問題はあるかもしれないので、今後の産駒全体の動向は見ていきたい。
告知
サララボ代表のジェイが馬の見方や競馬を勉強する過程で、大変お世話になったオーストラリアのNSW州の中條大輝調教師と、馬の見方についてや 競馬について勉強していく会員制コミュニティ「JJ Racing Club」をDMMオンラインサロンさんにて運営中です。
これまで3度サロンメンバーの皆様とセリに参加しており、モアナとターボ、さらに大狩部牧場さんとコラボでサニーという素晴らしい3頭落札できました。
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M石土井
ゴルシ産駒研究者
一口馬主を京都サラブレッド、YGG、広尾、DMM、ノルマンディーなどで楽しんでいる、ゴルシ産駒研究者。noteにてゴルシ産駒にまつわる投稿を行っている。血統分析に重きを置くスタイルで、代表出資馬はドライスタウトやグランベルナデット。ゴールドシップ産駒ではオルノアやブルーローズシップなどに出資している。
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