「アメリカンペイトリオットとデクラレーションオブウォーの違いって何?」
と聞かれ、検討したのがきっかけです。
ものすごく深い分析ではないかもしれませんが、お付き合いいただけますと幸いです。
アメリカンペイトリオットとは?
まずはアメリカンペイトリオット(以下アメペイ)の説明から簡単に。
競争成績はアメリカの芝マイルG1を1勝。
アメリカでは1段落ちる芝で1勝のみは、種牡馬の競争実績としては少し寂しい。
日本で例えると地方Jpn1を1勝といった感じでしょうか?
血統
目を引くのは母父ティズナウ。
アメリカが誇るマンノウォー系で怪速のインリアリティ(In Rieality)の系譜。
この血統は非常にスピードに富んでおり、日本で最も有名なこの系統は、1000m日本レコードのカルストンライトオですね。
母父父父リローンチ(Relaunch)とウォーフロント内のムーングリッター(Moon Glitter)はインリアリティ産駒の全兄弟なので、全兄弟インブリードとしてこの血を増幅しています。
アメペイは、そんなリローンチを軸に、豊富なプリンスキロやマームード(Mahmoud)による柔軟性と、トムフール(Tom Fool)やリボー系・テディ系のパワーをバランスよく配合されています。
全体の所感としては、基本的にスピード偏重。
配合相手は無理に長距離血統をつけるより、スピードのある血統を付けたほうが良さそうですね。
配合検討
産駒の獲得賞金上位を見ると、執筆時点での1位はビーアストニッシドで母父中距離馬(ネオユニヴァース)。
勝った重賞も芝中距離(スプリングS)でした。
しかし、それ以外の馬はマイル以下やダートでの活躍であり、血統面でもわかりやすく特徴が強く出ています。
ちなみにビーアストニッシドも、勝ったスプリングSの日は重馬場から始まるパワーのいる馬場で、そもそもが日本的なキレよりパワーが要求される中山1800m。
さらに、今年に入って1400mのOPを2着しているように、ビーアストニッシドも距離が持っただけで基本的にはアメペイ要素を強く受け継いでいると言えるでしょう。
ウォーフロントのスピードも、日本的な切れ味スピードではなく、アメリカ的な突進的スピードですので、その要素を強化してスプリントやダート適性を育てるのが、おそらく一番お手軽な配合公式だと思います。
ということで、獲得賞金現時点2位のブレスレスリーをご覧ください。
母父コマンズはダンジグ系の中でもパワー偏重で突進的なスピードを伝えますので良さそう。
サンデーで強すぎる個性を日本向きにマイルドにし、ヌレイエフで締めるのはバランス取れてるなぁと思います。
その中でも、他の産駒と共通して存在感を放つのがヌレイエフです。
詳しい説明は省きますが、ヌレイエフの中にはウォーフロントも持つフォルリ(世界有数のスタミナ血統)や、日本向きな末脚を強化するナスペリオン(ナスルーラとハイペリオンを併せ持つこと)があります。
実はアメリカンペイトリオットは薄いナスペリオンを複数持っており、それを刺激することで日本の芝向きな適性を上げているのではないかと思います。
獲得賞金上位の血統を見てみましょう。
太字はヌレイエフ(サドラーズウェルズ)持ちです。
*サドラーズウェルズはヌレイエフと3/4同血(父が同じで母が母娘)の酷似した血統。
- ビーアストニッシド*
- ブレスレスリー
- パワーブローキング*
- クレスコジョケツ
- コズミックフロスト*
- イスカンダル
- シルフィードレーヴ
- パトリオットラン*
- エテルナメンテ
- ラケマーダ*
10頭中7頭がヌレイエフ(サドラーズウェルズ)を持っていました。
この数字はたまたまではないはずです。
また、キングマンボ経由でヌレイエフを持っている馬が多いのも特徴です。(上記の*付き5頭がキングマンボ持ち)
キングマンボの母父がヌレイエフ。
ヌレイエフは一般的には良くパワーを伝えますが、もう一つの特徴が持続する末脚で、東京のような広い競馬場で最後まで伸び続けるのが特徴です。
平たく言えば、猪突猛進型というより、日本的な貯めて伸ばす競馬の適性を得るということになります。
4位クレスコジョケツはヌレイエフを持っていないものの、ダイナカールを持っています。
ダイナカールは非常に強力なナスペリオンの源であり、ヌレイエフと同じ作用をしていると言えるでしょう。
なお、ヌレイエフを持っていなかった7,シルフィードレーヴ と9,エテルナメンテに関しては、強力なナスペリオンはなかったものの、強力なナスキロ(ナスルーラ×プリンスキロ。しなやかさとキレを増幅させる)を持っており、やはり日本適性かつキレを上げていた印象があります。
まとめ
ビーアストニッシドは出ているものの、基本的にはアメリカ的な短距離・ダートに出やすい。
血統構成がスピード&パワーを強く伝えるため、下手に日本の芝中長距離の適性を意識した配合よりも、長所を伸ばした配合のほうが好走率は高そう。
特に、ヌレイエフが重要な要素になっていそうで、長所を伸ばしつつ、日本的な控えて直線勝負にも(やや)対応できるようになるのが良さそう。
全体的には取り扱いが難しそうで、日本で主流の繁殖とはあまり相性がよくなさそうですね。
一口で選ぶ際には、まずはヌレイエフ。次いで母馬のポテンシャルがアメペイと一致しているかを確認すると良さそうです。
M石土井
ゴルシ産駒研究者
一口馬主を京都サラブレッド、YGG、広尾、DMM、ノルマンディーなどで楽しんでいる、ゴルシ産駒研究者。noteにてゴルシ産駒にまつわる投稿を行っている。血統分析に重きを置くスタイルで、代表出資馬はドライスタウトやグランベルナデット。ゴールドシップ産駒ではオルノアやブルーローズシップなどに出資している。
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