武蔵野ステークス
まずは先日土曜日に行われた武蔵野ステークスを振り返ります。
ドライスタウトの最大の弱点は、やや揉まれ弱いところ。
母父アフリートの影響を感じる馬ですね。
これまでに負けたレースは(怪我をした兵庫CS以外は)全て馬群で揉まれたり、ピッタリマークされたときです。
今回の武蔵野ステークスは、2枠3番とかなりの内枠になってしまい、揉まれてしまう不安を抱えながらの観戦となりました。
しかし、そんな杞憂をあざ笑うかの様な圧勝劇。
道中こそやや囲まれ、4コーナーでは少し順位を落とす場面も合ったため不安になりましたが、直線ではゴーサインと同時に突き抜けていきました。
特にムチが入ってからは明らかにフォームが変わっており、前足も高く、トビも大きくなりました。
横山武史騎手のコメントでは
横山武史J談「調教で乗ったときはズブいと感じていたけど、レースでは反応が良すぎて早めに抜け出してしまった。その分遊んでしまったが、遊ぶだけ余裕もあるということ。言うことがないくらい良かったです」
というコメントを残しました。
今回は鞍上を務めてきた戸崎騎手が別馬に騎乗するということで乗り替わり(なお取り消し)となりましたが、これで特徴も掴んでくれたので、横山武騎手でチャンピオンズカップに向かってほしいですね!
(ただ、先約があり別の競馬場に行っているという情報も…)
これまでドライスタウトは全日本2歳優駿を勝ったり、かきつばた記念を制すなど実績を上げてはいました。
しかし、順調に使えない時期が多く、賞金で出たいレースをハネられてしまうこともありました。
でもこれで重賞連勝、更に国際グレードレース制覇したことで今後のプランが無限大に広がっていきます。
目指せチャンピオンズカップ!!
目指せサウジカップ!!!!!
ドライスタウトとの”馴れ初め”
私はドライスタウトの2年前(2017年)から1口馬主を始めました。
初年度の出資馬はDMMのシンハリングとヴィンクーロ。
今はなき1万口払いきり時代で、たった1万円で馬主体験を感じてしまい、一口沼にハマっていくことになりました。
その後、出資欲がどんどん膨らんでいき、2018世代は一気にノルマンディー、京サラ、広尾、そしてYGGに入会。(2年目でその4クラブを選ぶあたり、私の変態度がよくわかります…)
しかし、2018世代が2歳の段階で全く走る気配を見せず、2019世代は一口3年目にして大幅なテコ入れをした初年度でもあります。
そして、この世代で一定の成功を収めたことで、私の一口指針が固まった年にもなりました。
ドライスタウトとの出会い
YGGの利点は、なんといっても様子見ができるところでした。
現在は即売り切れる馬も少なくないですが、当時のYGGではかなり上位人気だったドライスタウトでも様子見できてました。
そのため、出資時期は満口直前の2歳5月というかなり遅い時期です。
これは様子見をしてたのではなく、行くことは決めていましたがポイントバックや値引きなどが一切ないYGGのライト会員でしたので、怪我などのリスクを最大限回避するためにあえて出資を遅らせていただけです。
この馬は募集時の段階から出資は確定していました。
見て下さいこの馬体、この歩様、この筋肉。
この時は一口を初めて実質2世代目で、まだまだ相馬眼や血統知識が無い時期でしたが
「この馬はモノが違う」
と確信を持っていました。
「広尾のアリシアンとドライスタウト、
この馬たちが走らなかったら、私は馬を見る目がないから一口をやめる」
と宣言した程です。
(アリシアンは1勝クラスで引退となりましたが、勝ち上がったのでセーフ…)
ドライスタウトを選んだ理由
結果が出てから理由を言ってしまうと雄弁になり過ぎて恥ずかしい面もありますが…
当時を思い出しながら書いていきます。
馬体
まず、なんと言っても馬体でしょう。
募集段階の動画を見ても、やや腰高なものの全く破綻を感じない馬体バランス。
私は馬体を見る時に違和感を重視しています。
言語化は難しいのですが、言い換えるならバランスの良さとか、「この骨格ならこういう筋肉の付き方をしてほしい」みたいな…パッと見て感じる第一印象とでも言いましょうか。
とまあ、とにかく窮屈さが全く感じられない身体の作りが目に付きました。
また筋肉もこの段階で既に十分な量を備えながら、無駄に多すぎていません。
付くべき所に付くべき量が付いています。
さらに、関節も筋肉も柔らかいのは好みでしたね。
次に歩様。
大型馬らしく非常に後脚が長く、そういう馬は身体を持て余しがちです。
しかし、この馬は一歩一歩が深く、更にトモ高で前脚に負担が掛かりそうなのに全くそれを感じさせない歩き方をしています。
そして非常にパワフルでありながら前も後ろもストロークが長く、全く硬さを見せません。
よく使われる表現で統一すると
・力強い踏み込み
・目を見張る柔軟性
・足元も不安なところが無い
・背中の連動性が高い
などでしょうか。
シニミニ尻
そして何より、シニスターミニスター産駒で走る馬特有の、ある特徴があります。
それがシニミニ尻です。
テーオーケインズもミックファイアもドライスタウトも共通して、シニミニ尻を持っています。
その正体は、大きくて丸いトモです。
大きさはどんな馬でも重要ですが、特に丸いトモかシニミニの特徴です。
凹凸のあるムキムキでなく、陰影があまり見えないまん丸である事が重要です。
改めて募集動画を見ていただいたら言いたいことがわかると思います。
シニミニ産駒はシニミニ尻に注目して3頭出資していますが、2頭が勝ち上がり、1頭は怪我で抹消となりましたが新馬4着と力を見せていました。
これらを総合すると行かない理由はないのですが、当時はまだ一口歴も浅く、大きく行けなかったことを今でも悔やんでます。
今の知識と経験であれば、この2倍、いや10倍は突っ込んでいたと思います。(後出し孔明)
血統
これは一口馬主で見るときの私の血統論の基本になることなのですが
「一定水準を超える馬は、血統を見ても(走るかどうか)わからない」
という点です。
つまり「走る馬の母」は「走る馬を産む」し、そんな母には「走る種牡馬」が配合される。
すなわち、全てが高水準です。
そんな馬たちは、血統だけ見るならほぼ全馬がG1に出てきてもおかしくない血統をしていますし、そんな血統を見て走るだの走らないだのは中々言えないですね。
なぜこのような話をするかと言うと、ドライスタウトは高水準の馬だからです。
・生産は下河辺牧場というエリート
・母 中央3勝
・半兄ヨハン ドラスタ募集期間中にOPまで出世
・半兄ノーリス 同募集期間中に勝ち上がり
これでシニスターミニスターの牡馬で2000万は破格と言えますね。
血統の精査はせずに出資しました。
血統表で字面を見ただけでダート馬になることは間違いないですし、破綻している部分もない。
母も走っていて、兄も出世しているなら、それだけで十分です。
…という内容で説明を放棄してはどうにもならないので、なぜ問題ないと思ったかを走った今だから言える言語化をしてみます。
まず一番最初に目を引くのはデピュティミニスターとフジキセキの黄金ニックス。
米国的なパワー血統が増幅されやすく、これまでにも多くのG1馬を排出してきました。
カネヒキリ
サウンドトゥルー
レッドルゼル など
デピュティミニスター×フジキセキ
デピュティミニスター×フジキセキで獲得したパワーを、APインディ譲りの柔らかい体で使い切るという、大型ダート馬のお手本のような完成をしていますね。
ドライスタウトは非常に飛びも大きく、正に東京ダート1600m向きという印象を受けます。
そのため、来年のフェブラリーステークスは絶対にとって欲しいレースです!
ただ、一方でこの特徴は逆に言えば小回りへの対応が難しいとも言い換えられます。
しかし、かきつばた記念やオーバルスプリントでは地方のキツいコーナーにも対応して見せたました。
これにはトムフールの影響を感じずに入られません。
トムフールは機動力が最大の武器なのですが、ドライスタウトの血統表には5代前に1つしか見えません。
しかし、母がトムフール≒フレーミングページ 4×5×6で持っており、戦績も小回りの新潟で2勝、小倉で2着2回と、明らかに小回りを得意とする馬でした。
更に、薄いですが父からも1本だけトムフールが注入されており、基本的な血統構成はAPインディ+パワー増幅型ですが、裏支えしているのはトムフールと言った印象です。
これまでとこれから
順風満帆な2歳
デビューから3戦目までは福永騎手の通算2500勝や全日本2歳優駿のレコード勝利など、順風満帆なスター街道の先頭を走っていました。
しかし、明け3歳になってからがドライスタウトに試練が重なります。
やっと整備されることになりましたが、当時の3歳春はダート上級馬が出られるレースが全くありませんでした。
サウジダービーに選出されましたが「まだ無理をして海外遠征する時期ではない」と辞退。
そうなると、他馬より重い斤量を背負ってOP戦に出るか、5月以降の重賞である兵庫CSやユニコーンステークスまで休養するかの2択となります。
無理をさせない方針であれば、必然と選択は重賞まで休養に当てる事になりました。
ここから歯車が狂い始めます。
受難の3歳
春を全休に当て、復帰したのは5月の兵庫CS(G2)。
距離が伸びる(1200m→1400m→1600m→1870m)のがどうかだけだと思っていたのですが、まさかの大出遅れ。
兵庫1870mのスタートは大外が非常に滑りやすく、魔のコースとなっていますが、落馬しかけるほどスタートで滑ってしまいました。
それでも4着と地力は見せましたが、出遅れ、リカバリー、大外を回り続けたロス、距離延長全てが重なり、初の黒星となりました。
その後はユニコーンステークスからジャパンダートダービーを目指していましたが、滑った際の怪我が長引きどちらも出走できず…
結局夏も全休することとなり、復帰は11月までズレ込みました。
ただ、11月の霜月ステークスでは久しぶりを感じさせない圧勝劇で一安心。
最大の目標、フェブラリーステークスへ向け、まずは1つの試練を乗り越えました。
4歳。苦難は続く。
しかし、有力馬が集まった結果、フェブラリーステークスに出走するには賞金が微妙に足りない想定となりました。
G1出走に向けて必勝体制で挑んだすばるステークス…
川田騎手に完全に蓋をされ2着。
これはレース見ていただければわかるのですが、明らかに1番強い負け方をしており、実力でなく「川田騎手に負けた」と断言できるレースです。
賞金を加算できなかったことで、賞金順で足切りされる可能性が残ってしまいました。
その後、有力馬が海外遠征することでなんとか出走できるようになりましたが、一抹の不安を抱えたまま本番を迎えることになります。
フェブラリーステークスは、レモンポップが1頭だけ次元の違う走りをしていた(ある意味メイショウハリオも)ので、順調でも勝てたとは言いませんが、道中またしても囲まれ、蓋をされ、最後に伸びてきたところがゴールでした。
これも決して実力を出しきれたと言えない、消化不良のレースですね…
その後はかしわ記念を目指すも賞金が足りず、かきつばた記念に回ります。
小回りとは言え実績が違うのでここは圧勝…と思いきや、またしても2着。
1着のウィルソンテソーロとは2.5キロ差があり、斤量差を生かした徹底マークにより鼻差の敗北。
ウィルソンテソーロの鞍上は川田騎手。
またしても川田騎手にやられてしまいました。
その後、さきたま杯に登録するも、パックリ割れてしまうほどクモズレを起こしてしまい、秋まで全休……
なぜこんなにも噛み合わないのか…悪循環が続くのか…
非常に不安な日々が続きます。
4歳秋 復活
牧浦調教師はものすごくネガティブコメントを連発する方で、この夏もクモズレの不安、夏バテ、疲労などなど…
「競馬に使えるレベルにはあると思います」
という、なんとも不安を抱えずにはいられないコメントを出しながら出走したテレ玉杯オーバルスプリント。
悪いコメントばかり出ている上に当日は豪雨が降り、水が浮く馬場で不安は増すばかりでした。
レースも、またしても川田騎手がドライスタウトの真後ろにつける不気味な騎乗をしていましたが、ここは力の違いを見せつける快勝。
実に全日本2歳優駿以来2年ぶりの重賞制覇でした。
その後、南部杯マイルCSに登録したものの、ここも大事を取って間を空け、武蔵野ステークスに向かうことになりました。
ここで記事の冒頭に繋がります。
無事出走できた武蔵野ステークスの圧勝は皆さんの知るところです。
今後
ちょっと大事に使われ過ぎかな?と思う部分や大切な時期に怪我やレースに使えないなど紆余曲折ありましたが、これでついに中央重賞馬です。
しかも、フェブラリーステークスと同じ舞台での圧勝は非常に心強く、また騎手のコメントや勝ち方からもう1ハロン伸びるチャンピオンズカップでも期待ができそうです。
年が明けると明け5歳になりますが、順調に使えていなかった分、まだ10戦目。
息の長いシニスターミニスターとアフリートの特徴を持ったドライスタウトのことなので、まだまだ走ってくれると思います。
2歳以来のG1制覇、そして海外挑戦まで期待して行きたいと思います!
M石土井
ゴルシ産駒研究者
一口馬主を京都サラブレッド、YGG、広尾、DMM、ノルマンディーなどで楽しんでいる、ゴルシ産駒研究者。noteにてゴルシ産駒にまつわる投稿を行っている。血統分析に重きを置くスタイルで、代表出資馬はドライスタウトやグランベルナデット。ゴールドシップ産駒ではオルノアやブルーローズシップなどに出資している。
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