現役調教師に聞く!競走馬デビューまでの道のりは?

どうも、ジェイです。

今回は私の豪州共有馬、トゥルー(シダーレーンの20・父リアルスティール)の所属先となるオーストラリアの中條調教師(@DChujo)に今更聞けない”競走馬デビューまでの道のり”について伺っていきます。

中條調教師には以前にもコラボ対談をさせていただいております。中條調教師を知らないよ!という方はぜひこちらをご覧ください。

競走馬としての歩みの始まり

ジェイ:先日私も中條厩舎でシダーレーンの20(リアルスティール産駒)の牝馬を共有させていただきました。

私も恥ずかしながら一口や共有馬主を始めるまで、正直デビューまでの道のりはあまり詳しく知りませんでした。

まず、セリで1歳馬を落札したら、最初に行うことはどんなことなんでしょうか?

中條師:基本的に、セリ会場にきている馬はセリ用に一度仕上げられています。

歩くのがメインですがウォーキングマシーンでジョギングをさせるなどして筋肉作っているんです。

セリは長い期間いるので、馬も疲れてしまうんですよね。そのためリフレッシュということで2−3週間休養牧場に送るというのがセオリーです。

そのあとに馴致に入ります。直接自分の厩舎でやるところもありますし、専門でやるところに出すところもあります。

馴致専用のトレーナーに預ける場合、そこに入厩してだいたい6−8週間くらいで馴致が終わります。

厩舎所属馬バハムート(父リアルインパクト)の馴致を行う中條調教師

そこである程度ハミをいれて、

・左に曲がる

・右に曲がる

・前に進む

などといった動きを習得します。

馴致のトレーナーによっては、小さい800mくらいのトラックを持っている人もいるのでキャンター程度で回れるくらいにしてくれるところもあります。

また、ゲートがあるところもあるので、ゲート練習をしてくれるところもありますね。

ゲート練習と言っても、ゲートにただ入って立って、速歩で出るくらいですが。

馴致がおわったら大概そのまま調教師の厩舎に入厩します。

2−3週間調教師の元で競馬場のコースで少し慣れるためにキャンター程度の調教をして、水泳があるとこはプール調教師をしたりトレッドミルをしたり、ある程度終わったら一旦放牧を入れる形ですね。

中條厩舎名物の水泳 ボートを漕ぐワイルドなおじ様のファンもいるとか?



馴致で大切なこと

ジェイ:初期の馴致は特に、難しそうなイメージがあり、それこそ荒れ狂う若馬と対峙する中條師の動画をSNSで見たような覚えがあります。

そんな馴致で大切なことはどんなことなんでしょうか?

中條師:馴致で一番大切なことは”馬のペースに合わせる”ことです。

鞍つけも3秒で終わる馬もいれば、3時間かかる馬もいます。

馬は『人は怖くないよ』という信頼関係も作らないといけないですし、手綱を引いたらこっちに曲がるとか、一切ない状態からのスタートですからね。

こちらのペースではできない難しさがあります。

セール出身の馬はそこまで時間がかからない子が多いですね。

馬も頭がいいので”誰が主か”わかっています。

初対面の人は馬も構えるんですよ。

そこをまず慣れさせてお互いの関係をしっかりと作って、そこから始まります。

すぐ受け入れてくれる馬もいるしガードが硬い馬もいるので、どれだけ時間がかかるか分からないんですよね。

そうすると1頭に1日使わなきゃいけない馬もいたりするので、他のことができなくなります。

今は調教師の業務が忙しいので自分ではできなくなってしまいました。

元々は自分のところで馴致をしていたのですが、今は信頼できる仲間に馴致を外注していることが多いです。

日豪のデビューまでの進め方の違い

ジェイ:日本では育成牧場や外厩で出走できるレベルまで育成を完了させてから満を持して入厩というパターンが多い気がします。

オーストラリアの中條厩舎ではどうなのでしょうか?

中條師:やっぱりJRAだと”厩舎に入る=レースに使う”というイメージですがこっちだと”育成も厩舎でやる”という感じです。

馴致後の育成は調教師の元でやるという厩舎が多いですね。

多くの方は入厩させて1ヶ月〜1ヶ月半くらい厩舎で調教して放牧に出して、成長具合を見ながらまた入厩させて進めて、放牧に出してというのをデビューまで繰り返します。

3セットくらい入厩と放牧を繰り返すのが普通です。

とはいっても、馬の成長次第なところもあります。

成長の早い馬は、放牧を挟まずトントン進んでデビューまでいく馬もいます。

これはオーストラリアでよく言われているんですが、

調教してから放牧に出すとぐんと伸びる

何もせず放牧しておくと成長がゆっくりなんですが、調教してから放牧に出すとぐんと成長するんです。

骨や屈腱だったり、ある程度柔らかいうちから負荷を与えておかないと強くならないと言われています。

やりすぎるとダメですが、やらなすぎもよくないです。

ただ単に放牧して3歳まで待って調教を始めるのと、1歳や2歳前あたりから調教である程度負荷をかけて放牧に出してと、繰り返している馬の方が故障率が低いです。

共有いただいているトゥルー(シダーレーンの20)はこの前見に行ったところぐんと良くなっていましたので、少し長めに放牧に出しておこうと思っています。

だいぶ幅が出てきましたね、少し前までいかにも日本馬っぽくて幅が薄いなと思っていたんです。

日本馬っぽい良馬場でピュンと行きそうな感じで。

こっちの競馬ではもう少しパワー、筋肉が欲しいなと思ってところ、先日見たら「これ本当にステイヤー?」と思うほど肉がしっかりついていていい感じでした。



ジェイの2歳共有馬の進捗は?

ジェイの共有馬トゥルー(シダーレーンの20・父リアルスティール)

ジェイ:共有馬トゥルー(シダーレーンの20)の育成状況はどうでしょう?

中條師:トゥルーは馴致後に調教して、一回放牧に出して、ついこの前が二回目の入厩(プレパレーション)でした。

キャンターで乗り込んで速いところまではやってませんが、ある程度強いキャンターで2周しっかり回れるようになっていたので先日放牧に出しました。

次に帰ってくる時に身体がしっかりしていたら15−15くらいまでやろうと思っています。

ただデビューレベルまでは仕上げない予定です。

この馬は3歳からと思っているので焦らずに行こうかなと思っています。

今の予定では4回目の入厩でデビューを考えていこうかなと思っていますが、次の入厩(3回目)で、あまりにもしっかりしている、ということであればデビューを前倒しすることもあります。

メトロだとある程度仕上げてトライアルやジャンプアウトを1−2回使って1回放牧します。その後戻ってきてデビューに向けて仕上げるのが一般的です。

一方うちの場合は、馬とオーナーさんの意向次第ですけど、馬に無理をさせない程度でいけるならジャンプアウトからそのままデビューにいくこともあります。

もちろん馬がきつそうなら、ごめんなさいして、放牧に出させてもらうこともあります。

2歳馬の時に大事にした方が古馬になってから楽しめることも多いので、場合によってはデビューできるかもな?と思っても一旦放牧に出して万全を期すパターンもあります。

ジェイ:なるほど、じっくり進めていく形になりそうなので、トゥルー(シダーレーンの20)のデビューはまだまだ先になりそうですね?

中條師:まだ先の予定ですが、状態が良ければトライアルとかは早めに使う可能性はあります。競馬形式の経験から学べることは多いです。

馬込みに入ってびっくりしてしまう馬もいて、レースに使いながら競走馬にしていく、経験を積んでいくという風潮がこちらではあります。

オーストラリアの場合は日本みたいに新馬勝ちを狙いにいくという感じではないですね。

こちらは3歳未勝利戦終了のタイムリミットがありませんから、そういう意味での焦りがないんですよね。

ジェイ:RSSさんで共有していたエネイブルの半弟セントロイドも、中距離の馬でしたが、初戦は短めの距離から走って、競馬を使いながら仕上げていくという形を取られていましたね。

ジェイのRSSでの元共有馬セントロイド(引退済み・半姉エネイブル)

中條師:そうですよね、それはこちらでは一般的です。

トゥルーも短距離でデビューさせて道中の流れを経験させるために走らせるということはありえます。適距離では当然ないんですけどね。

ステイヤーでも1400mとかでデビューさせることが豪州では多いです。

ベタータイムスも徐々に距離を伸ばしていって、徐々にステップアップしていって仕上げていき、勝利を勝ち取りました。

ジェイ:先生、うちのトゥルー(シダーレーンの20)もメトロで勝って欲しいです!!

中條師:いやいやもっと、上にいって欲しいですけどね(笑)

ベタータイムスもブリズベンのG3を目指しています。※取材後、ベタータイムスはウォーキングマシンで怪我をしてしまった様子、休養の可能性もあるそうです。1日も早い回復を願っております。

メトロ未勝利で勝てば3歳長距離は、重賞に出られるくらいの感覚なんですよ。

短距離だとメトロでいくつも勝たないとレーティング的に重賞は出られませんが、3歳馬のステイヤーは本当に層が薄いんです。

ステイヤーでも古馬になるとまた、層が厚くなるんですけどね。

ジェイ:3歳のうちに頑張ってもらわないといけないわけですね?

中條師:そうです、勝ち逃げしたいです。

ジェイ:オークス馬主にしてください(笑)期待しています!

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いかがでしたか?今回の記事で少しでも勉強になった!というポイントがあれば幸いです。

オーストラリア競馬や海外馬主について興味が出たという人はぜひ中條調教師のTwitterを覗いてみてください!

中條調教師Twitter:@DChujo

ジェイ

現役地方&海外馬主・競馬ライター

登録者4000人超え&累計再生200万回超えの元一口馬主YouTuber。社会人1年目から一口馬主を始め、キャロット・シルク・ノルマン・ロード・DMMバヌーシーの5クラブに入会。地方個人共有とRSS や中條厩舎の豪州共有に加え北米MRHでマイクロシェアを行う。血統の配合相性を重視していて代表馬はロードヴァレンチ、リレーションハート等。

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