■3つのファクターから隠された実力を推察する
12月11日(日)中山競馬場でカペラS(G3・ダート1200m)が開催される。中央重賞としては唯一のダートスプリント競走で、ダートスプリンターにとってはJBCスプリントと並んで数少ない輝ける舞台だ。今回はそんなカペラSを以下3つのファクターからアプローチする「コンプレックスアナライズ」で予想していく。なおデータは過去10年分を使用する。阪神JFについては火曜日にSPAIA競馬で記事を公開しているので、そちらをご覧いただきたい。
・レース傾向を見極める「データ分析」
・力関係を推察する「過去レース評価」
・秘めた能力を解き明かす「血統分析」
■データ分析
牝馬にとっては難関な舞台
まず最初に確認するデータは性別ごとの成績だ。牡馬・セン馬が【10-9-9-111】で牝馬が【0-0-1-18】となっている。中山ダート1200はテンのスピードだけでなく急坂を乗り越えるパワーも求められる。馬格やパワーの面で劣る牝馬にとってはこの条件で一流となるのは難しいことなのだろう。
【牝馬の出走予定馬】
・カルネアサーダ
・シンシティ
・ヤマトコウセイ
7歳以上は勝ち馬なし フレッシュさは重要な要素
続いては馬齢別のデータ。3歳馬が【2-0-0-7】4歳馬が【4-2-1-21】と若い世代の成績が良い。それに続いて5歳馬【2-4-5-38】6歳馬【2-3-1-32】と年齢を重ねるごとに徐々に成績は下降している。7歳以上は【0-1-3-31】で勝ち馬は0頭。サラブレッドは年齢を重ねると筋肉が硬くなることが多いためスピードに関しては落ちていくことが一般的だ。中央のスプリント重賞ともなるとスピードの要求値も高いためフレッシュさは重要な要素だろう。
【7歳以上の出走予定馬】
・エアアルマス
・ジャスパープリンス
・ヒロシゲゴールド
・リュウノユキナ
好走馬多数のサンデーサイレンス内包馬
ダート重賞としては意外かもしれないがカペラSはサンデーサイレンス内包馬の好走が多い。【7-6-6-59】と6割以上の好走馬がこの血統傾向にあてはまる。人気になることも多いため回収率では数字が出ていないが、スピードのよりどころとしてサンデーサイレンスは手っ取り早い種牡馬なのだろう。
【サンデーサイレンス内包の出走予定馬】
・オーヴァーネクサス
・オメガレインボー
・カルネアサーダ
・クロジシジョー
・シンシティ
・ジャスティン
・ハコダテブショウ
・ヒロシゲゴールド
・ヤマトコウセイ
・リメイク
・リュウノユキナ
・レディオマジック
好走頭数が多いのはJBCスプリントも距離短縮が好成績
最も好走数が多いローテーションは前走JBCスプリントで【2-3-2-8】だが、全体としては距離短縮組が【6-5-6-51】と好成績。JRAのダート番組の構成上ダート馬はマイル~中距離に照準を絞った馬が多く、必然的にレースレベルも高くなりやすいゆえに見られる傾向だと考えられる。
【距離短縮の出走予定馬】
・オーヴァーネクサス
・ジャスパープリンス
・ピンシャン
・リメイク
・レディオマジック
消しデータには該当せず好走データすべてに該当した馬たちは以下の3頭だ。
・オーヴァーネクサス
・リメイク
・レディオマジック
■レース評価:室町S、JBCスプリント、オータムリーフS、テレ玉杯
室町S
室町S組は1,2着馬に2頭を加えた計4頭が出走を予定している。
ヒロシゲゴールドがハナを叩きかけたが、ジャスティンが内から押して主張。ラップは33.3-35.8(前傾2.5秒)で時計の出る馬場状態とはいえかなりハイペースで前半無理をした2頭にはかなりきつい展開だった。
1着馬エアアルマスはその2頭から1馬身半ほど後ろの単独3番手を追走。エアアルマスも前半33.7程度で入っているので決して楽な展開ではなかった。4か月の休み明けでも身体はデキていて、距離短縮、ブリンカー、馬場などいろんな要素が噛み合っての好走に見える。前走の条件なら一番強い競馬をしたのは間違いないがいつ崩れだすか注意が必要。
中団から差してきた2着オメガレインボーもラスト1Fはエアアルマスと同程度の脚色だったためここの格付けは済んだ印象。
15着ジャスティンと16着ヒロシゲゴールドはともにキツイ展開だったため見直したいところだが、またもや2頭が同じレース。さらに今回はテンの速いハコダテブショウもいるから工夫しなければ展開は厳しそうだ。
JBCスプリント
JBCスプリントからは2着リュウノユキナが出走を予定している。
ダンシングプリンスが楽にハナを叩いて34.4-34.7(前傾0.3秒)。ダートスプリントの国内最高峰と考えれば明らかに遅い流れ。リュウノユキナは外目4番手追走で若干外を回った分のロスはあったが、展開が向かなかったわけではないので着順通りの評価で。中々勝ち切れない競馬が続いているが、昨年2着にきた舞台。前走の方が舞台適性は高かったがここでも上位の一頭。
オータムリーフS
オータムリーフSからは1着オーヴァーネクサスと競争中止のアティードが出走を予定している。
シゲルタイタンがハナを叩いて39.95-43.65(前傾3.7秒)のハイペース。1着オーヴァーネクサスは最内ぴったりの6番手追走。ゴール前カラ馬を交わすために一度進路変更をしたロスはあったが、それを差し引いても展開は向いていただろう。外を回したケイアイドリーの方が強い競馬をしていたので今回出てくれば狙おうと思っていたが残念ながら除外となった。アティードに関してはスタート直後に落馬のため度外視。
テレ玉杯オーバルスプリント
テレ玉杯オーバルスプリントからは2着のリメイクが出走を予定している。
プレシャスエースがハナを叩いて42.95-42.85(前傾0.1秒)でテレ玉杯としてはスローペースな流れとなった。リメイクは勝ち馬シャマルから2馬身ほど離れた4番手を追走していたが、このスローペースでシャマルの後ろでは交わすのは難しい。上がりの競馬となったが3着以下は突き放しており、1着シャマルも南部杯3着、チャンピオンズカップ5着だから十分評価できる内容だ。
■血統解説:ジャスティン、リュウノユキナ、リメイク
ジャスティン
母シナスタジアが米国産馬だから日本での牝祖は母。3代母Quite Honestlyを根幹として一族は広がっていて、ガルフストリームパークH(G1・ダート2000m)連覇のBehrensなどがいる北米牝系の一頭。スタミナも有するファミリーだが、Giant’s Causeway→Gone Westとついてきているからこの一族では最もスピードを強調されている分岐といっても差し支えないだろう。実際ジャスティンも急坂をこなすパワーこそオルフェーヴルから受け継いでいるものの体型やスピードは母系の影響を強く受けている印象だ。牝系も成長力があって、父がオルフェーヴルだから6歳になっても得意の舞台なら。
リュウノユキナ
日本での牝祖は11代母ビユーチフルドリーマーだから小岩井牝系だ。その中でも本馬は5代母がワールドハヤブサだからニッポーテイオーやホエールキャプチャが近親。元々芝の方が活躍馬が多く祖母ナギサはMarkofdistinction産駒だからタフな芝馬に出て京都牝馬特別2着。叔母にTCK女王盃勝ちのサウンドザビーチ(父アフリート)がいてその産駒に名鉄杯勝ちのスマハマ(父ネオユニヴァース)がいるが、本馬もクロフネ→ヴァーミリアンとつけられているから元々のタフさにスピードを加えたダート馬に出た。中山の舞台もこなせるパワーを兼ね備えた一頭で、年齢以外に嫌う要素がない。
リメイク
日本での牝祖は祖母シンコウノビー。シンコウノビーは米国産馬だが日本で現役時代を過ごし、ファンタジーS2着などの実績がある。シンコウノビーは繁殖としても優秀で本馬の叔母ウインレジェンド(父サンデーサイレンス)は葵S勝ち。母サリエル(父キングカメハメハ)はファルコンS3着。シンコウノビーは米国産馬ではあるものの牝系は欧州で繋がってきていて、同一の一族にはウォーニングやRainbow Questなど芝適性が高くて底力がある馬が多い。ダート適性は父ラニが担っていて、距離適性に関しては祖母以降の母系から受け継いでいるが、血統構成を考えれば1200は少々短いか。
■ジャスティンのスピードに期待
室町Sのレース回顧でも少し触れた通り今回は逃げたい馬が多い印象で普通に考えればHペースで差し馬を狙いたくなるが、ここはジャスティンから入りたい。ジャスティンは元々溜めて良さが出るタイプでもないし、前走は斤量59kgと出負けから無理に逃げたことが敗因と考えられる。距離短縮の好走データには当てはまらないが消しデータにも当てはまらない。血統はプラス材料で、芝スタートの中山ダート1200mは得意なだけに中心視。
消しデータに当てはまらず好走データにすべて当てはまるオーヴァーネクサス、リメイク、レディオマジックの3頭と実力上位のリュウノユキナも相手で押さえておくべきだろう。
牝系研究家・競馬ライター
牝系こそがサラブレッドの根幹であると考え、日夜サラブレッドファミリーの研究と最適な配合の追求を行う。競馬予想、血統解説、コラムなどを通じて競馬の魅力を多くの人に伝えることをモットーとしている。SPAIA競馬でも記事連載中。
—最近の私––
最近買ってよかったもの。次世代型猫用全自動トイレで時間と手間が格段に変わった。これまで猫が散らした砂を犬が食べてしまうことがあったが、これを導入してから清潔が保たれている。
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