競馬場に異変?白毛のアイドル”ソダシ”に見る潮流の変化【競馬コラム byジェイ】

どうも、ジェイです。今回は先日ソダシが出走した府中牝馬Sの現地観戦に東京競馬場を訪れたジェイが、競馬場で感じた”異変”と、競馬界の未来のために我々には何ができるのだろうか?

という壮大なコラム記事を書いていこうと思います。最後までお付き合い頂けますと幸いです。

競馬場で起きる”異変”とは?

気持ちの良い秋晴れの東京競馬場。

競馬の聖地・府中を訪れたのは、実に4年ぶりのことでした。

久しぶりの府中で、改めて感じたことは

”若い人と、女性が増えたなあ”

ということでした。

往年の競馬ファンのみなさんも、最近競馬場を訪れた方はこの感情を抱かれたのではないでしょうか?

先日府中で私の目に飛び込んできたのは、ターフィー人形の前でアニメ「ウマ娘」の人気キャラクターゴールドシップの決めポーズで写真を撮る姿。

純白のアイドルホースを手に競馬場を散策する若い女性の姿。

一昔前の競馬場では、正直滅多に見ることのなかった光景だったと思います。

僕が競馬を始めた2016年前後は、競馬場は今よりも”賭場”としての気質が強かったように感じます。

赤ペンを耳の後ろに挟み、ワンカップ大関片手に「差せー!差せー!」と大声を出す。

そんなステレオタイプな競馬愛好家の姿が目立ち、男子大学生のグループらしき姿はチラホラ目にしましたが(ちなみに私もそのタイプでした)若い女性だけのグループや、若いカップルで競馬場に来ている人は少なく、目立っていた印象があります。

JRA側も若い人や女性を取り込もうと、いわゆるラッタッタCMやUMAJOスポットなるものを作り、努力していたと思います。その努力が、今になってようやく花開きつつあるのではないか?と感じるのです。



”異変”の要因は?

若いファンや女性ファンが競馬場に増えた要因は

①コロナによる入場制限

②ウマ娘の影響

この2つによるものが大きいと私は考えています。

少し、時を遡ってみましょう。

2020年ごろから新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、競馬場はしばらく無観客開催に、その後は大幅に入場者数に制限を加え、インターネットで事前に申し込み当選しないと競馬場に入場することが叶わなくなりました。

この時点で、競馬場の様子はかなり変わっていたと感じていました。

明らかに若い人が増えていて、年配のステレオタイプな競馬愛好家の姿はかなり少なくなっていたと思います。

これは当時入場券をインターネットで購入しなければならず、そのハードルのために客層が若くなった可能性があると思います。(現在は当日入場券発売あり)

また、入場制限により競馬場内が大混雑になることはありませんし、大声禁止という呼びかけにより、初めて足を運ぶ人にとっては”賭場の雰囲気”に圧倒されることのない、過ごしやすい空間になっていたように思います。

実際、私の周りでも

「競馬場には行ってみたいけど、怖い」

という声はよく耳にしました。

コロナによる影響で(それが競馬にとって良いか?という議論はさておき)競馬場に対する漠然とした恐怖心があった人たちにとっては、足を運びやすい場所になったのは間違いないのではないかと思います。

また、いくらコロナの影響があったとはいえ、競馬に興味を持つきっかけがなければ、競馬場を訪れることはないと思います。

そのきっかけを作ったのが、みなさんご存知の大ヒットアニメ「ウマ娘」です。

史実に基づいたストーリーで

「このアニメやゲームを通じて競馬に興味を持った」

という声はSNS上でも溢れています。

今の30代40代の世代だと、”ダビスタ”がその導入役を担っていたと思いますが、10代20代世代では、”ダビスタ”に変わる大ヒットゲームはありませんでした。(もちろんその世代でもダビスタから競馬にハマったという人は一定数いると思いますが)

そんな中出てきたのが、”ウマ娘”です。

そしてコロナとウマ娘、2つがちょうど同じタイミングに重なったことが今の競馬場の様子につながっているのではないか?と思うのです。

ちょうど初心者が入りやすい状況になっていた競馬場にウマ娘の影響で足を運んだ初心者ファン、という構図が成立し、昨今の若いファンや女性ファンの獲得につながったのではないかと私は考えています。

アイドルホース ”ソダシ”

↑大人気となったソダシ写真集(10月21日締め切りでサララボTwitterにてプレゼント企画中!)

若いファンと女性ファンの支持拡大を象徴する馬が、私はソダシだと思っています。

ソダシは白毛のルックスで可愛らしく、また競走能力も高いことから、新規ファン、古参ファン問わず人気を集めていると思います。

しかしソダシが仮に5年前に登場していたら、ここまで人気になっていたでしょうか?写真集が飛ぶように売れていたでしょうか?

私はそうはなっていないのではないか?と思います。

もちろん、競馬ファンからは広く愛される人気者になっていたと思いますが、今のソダシには競馬ファンを飛び越えた”ソダシファン”がいます。

「競馬はそんなにみないけど、ソダシは白くて可愛くて好き」

という層です。

※ちなみにこのファン層は一定メイケイエールにもいると思います。

この流れが生み出せたのは、ウマ娘や新規ファンの拡大の潮流により、”競馬”というものに対する抵抗感や縁遠い感覚が少なくなってきていることが要因だと私は考えています。

実際、府中牝馬Sではパドックでソダシを見ようと「G1か?」と思うほどの人が集まっていましたし、最後のゴール板前で勝ち馬に差された時には、

「あ〜〜〜」

というため息混じりの歓声がスタンドから上がっていました。



若い新規ファン獲得の重要性

JRAの資料によると、平成10年〜平成23年まで14年連続で前年比売得金額が100%を下回っています。右肩下がりで減少し続けていたのです。平成12年には昨年比93.9%まで落ち込んでいます。

その後平成24年からは前年比100%越えを達成し令和元年〜3年は毎年、前年比約103%ペースで推移しています。令和2年〜3年は会場入場数がコロナで著しく減少していたのに、です。

この売り上げ向上の一因はインターネットでの馬券購入が普及した部分もあります。ただやはりここ最近の競馬人口増加の影響は大きいのではないかと思います。

私は競馬がこれからも発展し、競馬というビジネスが成立していくためには若い新規ファンを獲得して売り上げが拡大していく今の状況を守り続けなければならないと考えています。

今回はその理由を説明するため、逆にファンの数が増えず売り上げが減少する状況になると何が起きるのか?モデルケースを2つほど紹介いたします。

 ケース① 消える地方競馬場

参加人口や売り上げが右肩下がりで発展していく業界は残念ながらほとんどありません。

JRAも右肩下がりで売り上げが減少していた時期には、経営難で多くの地方競馬場(NAR)も廃業に追い込まれました。

・中津競馬場(大分)

2001年に廃止。理由は累積赤字によるものです。

・荒尾競馬場(熊本)

2011年に廃止。2011年9月5日の荒尾市議会において赤字続きなどを理由に廃止が決まりました。

・福山競馬場(広島)

2013年に廃止。経営好転せず福山市長が廃止を判断しました。

これはほんの一例ですが、売り上げが下がると開催が維持できなくなり、次々と廃止・規模縮小せざるを得なくなります。

そうなると、より一層、競馬に触れる機会が少なくなり競馬の人気、売り上げは下がりさらに、廃止・規模縮小と負のスパイラルに陥ることが懸念されると思います。

 ケース② パチスロ業界

実は先日、パチスロのライターさん何人かとお話しする機会がありました。

彼らが口にしていて印象的だったのは

「パチスロはオワコンだ、早く他のジャンルに移らないとやばい」

という言葉でした。

話を聞くと、諸般の事情で遊戯人口が激減してしまっていて、仕事が減り始めているとのこと。

レジャー白書2021記者発表会資料に基づく記事には

”パチンコ・パチスロ関連の指標では、参加人口は前年より180万人と大幅に減少し、710万人と推計された。昨年、過去最低の890万人と推計されたが、2年連続で過去最低を更新する結果となり、遊技機撤去を巡る問題やコロナ禍に見舞われた影響の大きさが浮き彫りとなった。市場規模(貸玉料金)についても、14.6兆円(前年比5.4兆円減)と非常に厳しい結果が示された。”(webGREENBELT2021年9月31日より抜粋)

と書かれています。

売り上げ減少により、パチンコ店での営業の仕事も少なくなり、新台の数も当然減ってしまうため、ライターとして取材活動をする機会も少なくなってしまうといいます。

そうなるとライターも別のジャンルに移ろうか?と考えてしまうのです。

ジャンルの人気を支える仕事の一つがライターだと私は考えています。

その大切なライターが他に流出しまっては、さらに人気減少に拍車をかけるのではないか?これは負のスパイラルなのではないか?と思ったのです。

ちなみに他の方曰く、パチスロ人気が下がっている背景には法規制上の問題もあり、こちらが変わってこれば状況は変わるのでは?という意見もありましたので、併せて紹介させていただきます。

まとめ

競馬に限らず、初心者、素人をよく思わない層は一定数いると思います。

しかし、そのような不寛容な態度をとっていては、結局自分が長年愛好してきた趣味の首を絞めることになるのではないか?ということを胸に手を当てて考えていただきたいなと思うのです。

昨今、いわゆる競馬初心者の牧場見学時のマナー違反であったり、競馬場でのマナー違反が度々問題になっていると思います。

このマナー違反には僕は2種類あると思っていて、

①意図的にマナー違反をしている場合

②マナー違反と知らずにやってしまっている場合

だと考えています。

①の意図的なのはもう、どうすることもできません。それに意図的に違反する人はもう初心者とか玄人とか、関係ないと思います。

問題は②です。

これについて僕は初心者を悪者にするのは違うのではないか?と思うのです。

例えば「馬の近くで傘を開くと馬が驚いてしまうからやめようね」は、競馬を知っている人にとっては当たり前かもしれませんが、全く知らない人にとっては「え?そうなの?」となってもおかしくないと思います。

初心者の人が気づかないうちに違反をしてしまわないよう、より一層広報周知に胴元は力を入れるべきだと思います。

我々の当たり前は、世間の当たり前ではないということを自覚する必要があると思うのです。

一方でそれだけでは限界もあるので、近くにいる玄人が、そっと教えてあげるというのも大事なことなのではないかな?と思います。(喧嘩腰はいけませんよ笑優しくね。)

「これだからウマ娘勢は!」とSNSで陰口を言っていても事態は好転しないですよね?新規ファンに不寛容な雰囲気作りは回り回って自分の首を絞めていると、1人でもこの記事を見て気づいてもらえたら嬉しく思います。

我々競馬愛好家も、かつては右も左も分からない初心者だったわけです。その時のことを思い出して、どうかこれからこの世界に足を踏み入れる人を暖かく迎えて欲しいと思います。

”ソダシファン”を”競馬ファン”にできるかは、私たち次第かもしれませんよ。

ジェイ

現役地方&海外馬主・競馬ライター

登録者4000人超え&累計再生200万回超えの元一口馬主YouTuber。社会人1年目から一口馬主を始め、キャロット・シルク・ノルマン・ロード・DMMバヌーシーの5クラブに入会。地方個人共有とRSS や中條厩舎の豪州共有に加え北米MRHでマイクロシェアを行う。血統の配合相性を重視していて代表馬はロードヴァレンチ、リレーションハート等。

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