どうも、ジェイです。
エリザベス女王杯2022は2011年のスノーフェアリー以来、11年ぶりとなる海外馬が来日しています。
愛オークス馬のマジカルラグーンについて、気になる日本の馬場への適性と能力について検討していきたいと思います。
マジカルラグーンとは?
父Galileo母父Lagunasの3歳牝馬。近親にノヴェリスト。7戦3勝(3-1-0-3)
デビューから3戦はマイルを使い、4戦目は2000m、5〜7戦目は2400m前後のレースを使っている。
カラ競馬場で行われたG1愛オークス・芝2400m(良)勝ち馬。
このレースでマジカルラグーンは抜群のスタートで飛び出し、好位にポジションを取った。
その後内からハナを主張する馬がいたため2番手に控えいい手応えで追走。
最後の直線で逃げ馬をかわし、2着馬トイに外から迫られながら、勝負根性を見せ粘り込み半馬身差で勝利した。
しかし、前走ヨーク競馬場のG1ヨークシャーオークス・芝2370m(良)では5着に沈んだ。
このレースは、1着に後の凱旋門賞馬アルピニスタ。
2着には英オークス馬でその後ブリーダーズカップフィリー&メアターフを勝利したチューズデーと、相手関係がかなり厳しいレースだった。
マジカルラグーン自身は、このレースでも好スタートからハナを切るが、道中外から3着馬だったラプティットココに馬体を併せられる形。
ラプティットココのすぐ後ろにはアルピニスタと常にプレッシャーをかけられながらの道中になり、苦しい展開になった。
最後の直線で懸命に上位馬に食らいついたが、最後は脚が残らず少し後退してしまい、勝ち馬から5〜6馬身ほど遅れての入線となった。
各メディアの報道を見ると、陣営もこのレースについては左回りに加え、相手が強かったと話している。
日本のレースへの適性は?
愛オークス馬であることや敗戦したとはいえ前走も世界レベルの馬たちと熾烈な争いを繰り広げたマジカルラグーンの競走能力が、相当のものであることは間違いないと思う。
しかし、欧州と日本では芝や高低差などさまざまな違いがあり、求められる適性が違うと多くの専門家が指摘している。
マジカルラグーンの父ガリレオは長らく欧州ではリーディングサイアーに輝いてきた大種牡馬で、フランケルを筆頭とする後継種牡馬も輩出しているが、日本のガリレオ産駒で歴代賞金最高額馬はミッションモード(27戦3勝)の7685万円と、1億円オーバーの馬は出ていない。
明らかに欧州のパフォーマンスと日本でのガリレオ産駒のパフォーマンスが異なっていることも、求められる能力の違いを浮き彫りにしていると思う。
事実、海外から遠征してくる馬は日本の好走馬場に対応できず惨敗してしまう馬も少なくない。
ジャパンCの外国産馬の勝ち馬は、2005年のアルカセットを最後に出ていない。
逆に、今日までパリロンシャン競馬場で行われる凱旋門賞・芝2400mを制覇した日本馬はいない。
香港やオーストラリア、ドバイなどへの日本の遠征馬の大躍進に比べて、欧州遠征の戦績は正直見劣りする。
これらのことから、日本と欧州は現在最も求められる能力の違いが大きい舞台だと筆者は考えている。
今回マジカルラグーンがエリザベス女王杯で好走できるかの鍵は、やはり日本の馬場やレースへの適性にあると考えてまず間違い無いだろう。
netkeibaの記事によると、陣営は
「マジカルラグーンは時計の出る馬場を好んでいて、いい成績を残しています。アスコットやカラの良馬場で買っているので日本の馬場も問題ないと思っています」
とコメントしている。
レース前の陣営コメントは多少のリップサービスもあるので、少し過去の戦績と競馬場の特徴を検証してみよう。
愛ダービーが行われるカラ競馬場は、欧州の中では確かに高低差が少なく時計も出やすい競馬場だと言われている。
しかし、愛ダービーはゆるやかな上りの部分が多く、最後の直線もゆるやかな上りが終始続くようなコース設計になっていて、しっかりとスタミナが求められるレースになっている。
僕は日本競馬の適性とはやっぱりちょっと違うのではないか?と思っている。
また、前前々走のアスコット競馬場で行われたG2リブルスデールステークス・芝2390m(良)も勝利しているが、このアスコット競馬場というのは高低差が最大20mほどある、かなりタフなコースになっている。
今年アスコット競馬場に挑戦した日本馬を振り返ると、グレナディアガーズがプラチナジュビリーSで19着。シャフリヤールがプリンスオブウェールズSで5頭立て4着と苦戦している。
欧州の中ではスピード馬場への対応能力はある馬で、パンパンの良馬場歓迎という馬なのだろうが、”日本の超高速馬場に合うのか?”と言われると僕は『陣営コメントほどの信頼度はないのではないか?』と考えている。
一方、阪神内回り2200mは瞬発力勝負というよりはスタミナ・持続力勝負になりやすく、日本のレースの中では欧州馬が力を出しやすい舞台ではあると思う。
去年の勝ち馬アカイイト(10人気)、2着馬ステラリア(7人気)は共にキズナ産駒。
パワーやスタミナに秀でた種牡馬で、ソングラインをはじめとして、キズナ産駒は海外の舞台でも活躍している。
この馬がエリ女で突き抜けるとしたら、日本競馬らしい瞬発力勝負というより、スタミナや持続力勝負になった時だろう。
懸念点としては、内が荒れてしまっていて伸びにくく例年外差しが決まりやすい点だ。
マジカルラグーンは先行馬なので、前が総崩れになる展開だとかなり厳しいのではないかと考える。雨の影響もありそうなので当日のトラックバイアスには注意したいところだ。
ちなみに、マイルのレースではあったが、唯一稍重で出走したG1フィリーズマイルは、7着に沈んでいる。
日本的感覚で考えると”海外馬は馬場が渋った方が可能性があるかな?”と思いがちだが、陣営は時計の速い良馬場の方が良い旨のコメントしている。
確かに、7戦のうち6戦は良馬場で走らせていて、欧州競馬では馬場が希望通りでないと出走を取り消すことは日常茶飯事。良馬場で走らせたいと言うのは陣営の本心なのだろう。
当日は雨予報、戦績と経過を見ていると馬場が重くなった場合は評価を素直に下げる方が良さそうな気がする。
また、この馬は基本的にスタートよく先行して、ぴゅっとキレる脚を使うと言うよりじわじわと長く伸びていくタイプの馬。
福永Jも某競馬番組のYouTubeチャンネルで発言されていたが、欧州馬は若干日本馬よりスタートが遅い。
そのため、普段逃げたり先行しない日本馬が海外遠征に行くと逃げていたり先行したりしているのを見たことがある人も多いと思う。
この馬がいつも通りスタートを決めて前目で競馬ができるのか?というのもポイントの1つになる。
私の予想では、日本の馬場でこの馬が後ろから差してくるのはあまり想像できず、勝つ(馬券内にくる)としたら前目でじわじわ粘って差し馬が届かないぞっ!ってパターンだと思う。
執筆時点で枠が分からないが、両隣の馬がスタート速めの先行馬か、差し追い込み系の馬なのかでも評価を変える必要があると思う。
スノーフェアリーの再来となるか!?
2010年・2011年に衝撃的連覇を飾ったスノーフェアリーの印象が強い人は多いと思う。
同じ愛オークス勝ち馬であるし、重ねて見ている人も多いだろう。
しかし、あくまでも現時点でのマジカルラグーンの戦績と2010年・1回目のエリ女出走前のスノーフェアリーの戦績を見比べてみると、筆者はスノーフェアリーに軍配があがると考えている。
スノーフェアリーは愛オークス前にG1英オークスも勝利していて、その後マジカルラグーンが5着だったG1ヨークシャーオークスでも3馬身差ではあるが、2着に入っている。
その後ハイレベルなステイヤーレース、G1英セントレジャーでも4着に入った上で来日していて、芝2000〜2400mでは欧州3歳牝馬最強クラスの戦績をマークしている。
マジカルラグーンは、愛オークス馬であるし素晴らしい馬であることは間違いないが現状スノーフェアリーレベルなのか?と言われると「まだわからない」というのが本音だ。
個人的には、もっと日本のG1レースに海外の活躍馬がバンバン遠征してきて、国内で世界のハイレベルな馬と日本馬が対決するような競馬をみられるようになってほしいと願っているので、好走を期待したい気持ちもあるのだが…。(アルピニスタのジャパンC取り消しと引退は大変残念に思っている)
マジカルラグーンの状態は?
今回はデビュー戦から継続騎乗で、デビュー前から稽古をつけているという厩舎専属のSフォーリー騎手が手綱を取る。
ラジオNIKKEIの11月8日の記事によるとケイト調教助手は
「馬は明らかに前向きになっている。今日は芝コースでダグとキャンターを1周ずつ行いましたが、馬はここの芝が好きなようですし、ストライドもよく、もっと走りたそうにしていました(一部省略)」
などとコメントし、状態の良さをアピールしている。
右回りも陣営としては良いと考えているようだ。
追い切りは基本的にダートコースで本国でも行っているようで、今回も9日(水)に阪神競馬場のダートコースで追い切りを行っていた。
S・フォーリー騎手を背にラスト1ハロン12.4秒の時計をマークしている。
追い切り後にフォーリー騎手は会見で
「以前にレースで勝利を挙げた時と同じような状態、ゲートを出るのが上手な馬だから前の方でレースをしたい、馬場は速い方がいい」
と話している。
陣営コメントは基本強気で吹いてるパターンも往々にあると思うが、輸送で減った馬体重も戻りつつあるようで100%の仕上がりかはさておき、力を出せる状態にはありそうだ。
このレースの成績が良ければジャパンCも視野と言う発言があったが、ジャパンC大目標でここは叩きというニュアンスよりは、通用してお釣りがあればジャパンCも挑戦したい、くらいのトーンに見受けられるので、太め残りで叩きとしてこのレースを使ってくる可能性は低いのではないかと思う。
何はともあれ、馬場が違い、転戦できるレースが限られるなど遠征先として日本は決していい条件ばかりではない。
そんな中、日本遠征にきてくれて、日本を盛り上げてくれるのは1人の海外馬主としてとても嬉しく思うしどんな結果であれ、まずは無事にレースを終えて無事に帰国の途についてもらいたいと願うところだ。
ちなみに筆者は本命馬はデアリングタクトと決めているが、重馬場や極端な外差し馬場にならなければ相手としてマジカルラグーンを絡めた馬券も買おうと思っている。
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