Inglis Classic Saleへ
今回、Ozakiが参加したのは毎年オーストラリアの2月上旬、シドニー郊外で行われる競走馬のセリ市、Inglis Classic Saleです。
シドニーと言えばオペラハウスやハーバーブリッジが有名ですが、今回のセリ会場であるInglis社Riverside Stablesは有名な観光地からは30キロほど西側です。
ざっくり東京駅から東京競馬場くらいの距離があると言えば、競馬ファンの方には伝わりやすいでしょうか?
Inglis Classic SaleはInglis社が主催するセリの中で比較的リーズナブルな価格帯の競走馬が取引される位置づけでありながら、近年GI馬や高額賞金レースを勝つ馬が次々と誕生しているセリ市です。
価格が低いのに活躍馬が出るわけですから、「コスパ」がいいセールということですね。
こうした事実が知られるにつれ当然ながらオーストラリア国内でも注目度が上り、この数年平均落札価格が急上昇しています。
私の個人所有馬So Beautiful Story(父ブレイブスマッシュ)も昨年のこのセリ市で購入しています(昨年、私が落札に至るまでの経緯はこちらの記事をご参照下さい)。
去年はコロナ禍の影響もあり、一切現地に行くことなく購入してしまったのですが、今年は念願かなって現地に行くことができました!
去年一頭馬を購入する際、そしてオーストラリア競馬を体験する際に大変お世話になったライジングサン・シンジケート(以下RSS)の川上代表から「ぜひセリ市も生で体験してみてください」とお誘いを受けていたこともあって、現地参加が実現しました。
一頭持ちの所有馬が現時点でレースに出走していないため、資金的にゆとりがあるわけではありませんが、私もあわよくば一頭お買い得な馬が落札できればいいな、もし自分がダメでもRSSチームの馬選びに参加しつつオーストラリアのセリを勉強できればいいな、と思って準備を始めたのです。
実際にセリに参加します!と川上さんにお伝えするとまずInglis社の日本担当の方から「ホテルはどういうところがいいですか?」との質問メールが飛んできました。「え、ホテルはどういうところがいいですか?ってホテル取ってくれるのですか?」という素朴な驚きが。
そう、今回まず驚いたのはセリに参加する場合のInglis社のホスピタリティ。
セリ市に参加するオーナー(候補含む)にはホテル予約を行ってくれるだけではなく、素泊まり料金はInglis社の負担。
そして到着時の空港とセリ会場(あるいはホテル)までの往復送迎も無料。
さらにホテルからセリ会場までは毎日シャトルバスが複数用意されていましたので、こちらも無料!
ジャパネット的なあれも、これも無料!という状態で今回の滞在中滞在費と現地交通費を私は一銭も支払っていません。
また、下見期間中は食事や飲み物を提供する場所を上場馬がたくさんいる大手牧場があちこちに用意しています。
そして、セール中はInglis社がビュッフェ形式の食事やデザート、そして飲み物(お酒含む)を豊富に用意。
日本でもセリ市ではオーナー用に無料の軽食や飲料が提供されていますが、オーストラリアではより一層気持ちよく馬を買ってもらうためのおもてなしが徹底されていることを肌で感じた4日間でした。
セリは実際どんな感じ?
私のような若葉マークオーナーはもちろん、歴戦の大オーナーたちも、いきなり馬を購入するのではなく、購入検討中の馬を下見しなければ馬は買えません。
そしてこのInglisクラシックセールは上場馬がなんと830頭(カタログ掲載時)。
日本での一大イベントであるセレクトセールが2日間で約440頭であることを考えればその二倍の頭数がいるわけです。
このため、セリ本番の前に下見期間が約1週間用意されています。
今回Ozakiは2月10日の朝シドニー空港に着陸し、セリ会場には10日の昼過ぎに到着。
そこから半日と翌11日丸一日を下見に充てました。
さすがに800頭近い上場馬がいるので、会場はかなり広大。
ただ、下見そのものは日本のセリ市の様子とそれほど変わりません。
日本のセリ市に参加されたことがない方も、一口クラブの募集馬検討ツアーと似ていると言えばイメージしやすいでしょうか?
お目当ての馬を馬房から出してもらい、立ち姿や歩様を入念にチェック。
人によっては首筋や脚元を触って確認することもありますし、牧場側も購入を検討している方のリクエストにはしっかりと応えてくれます。
Inglis Classic Saleの会場であるRiverside Stablesには敷地内に11の厩舎があり、今年は欠場馬を除く約750頭の上場馬が待機していました。
Ozakiも自分自身の狙い馬を順にチェックしつつ、RSSの狙い馬たちも川上さんらと一緒に見学して回りましたが、1日半あっても時間は足りないくらい。
下見の日程が終わるといよいよセリの本番が始まります。
セレクトセール中継で「◎億円!」といった声が飛び交う部屋をご覧になったことがあるでしょうか?
ああいった、鑑定人が馬の値段を読み上げながら購入者を決定する競り上げが行われるのは馬房エリアとは別に用意されたセールスアリーナ。
馬の購入を希望するオーナーや調教師たちは円卓が多く並べられているアリーナの前方や椅子だけが並ぶ後方の席に陣取ります。
他、会場の外側に立って競ることも可能です。
このあたりの構造は日本のセリ会場とほぼ同じでした。
ちなみにセリの最中も上場を待っている馬たちの下見はもちろんできます。
RSSチームは購入を希望する馬の順番をよく見て、競る可能性がない時間帯では二度目、三度目の下見をしていました。
何日か連続して馬を下見することで、慣れない環境で疲れやすい馬なのか、下見を繰り返しても元気一杯の馬なのか特徴が見えてくるそうです。
Ozakiも同じ馬を何度か見ましたが確かに、「昨日より状態が落ちているなぁ」という感覚を何度も持ちました。
ビデオだけではわからない、実馬を何日か続けて見ることでわかることがあるのだ、ということを今回学びました。
セリ市の性質上、欲しい馬を欲しい値段で買えるとは限りません。また、購入希望度が高い(優先度が高い)馬がセールの後半に登場する場合にそれよりも前に登場する馬にどこまで競るかは慎重に考えなければなりません。
前半で予算を使ってしまうと本命の馬が買えませんが、本命の馬まで待っても価格が上がりすぎれば肝心の本命馬が購入できないのです。
値段があらかじめ決まっていて、募集番号に関わらず、同時並行で何頭も購入希望を出せる一口とは戦略がかなり変わってきますね。
今回RSSチームは下見を経て約40頭の最終候補馬をリストアップ。
その中で優先度をつけてセリ初日を迎えていました。
Ozakiも昨年オンラインで参加したセリ同様に最終候補馬と各馬にいくらまで競るかの予算表を用意していよいよ初日のセリが開幕です。
馬は落札できた!?
RSSとOzakiが陣取ったのは最前列の1番テーブル。
臨場感あふれる会場にオーストラリアのセリ初参戦のOzakiは完全に飲まれてしまいました。
初めて手を挙げたのはLot50。
3万ドルで最初に手を挙げ、4万ドルで二度目の挙手。
しかしその後は自分がLeading Bidであるにも関わらず、二度三度手を挙げてしまい川上さんに「落ち着いて下さい」と言われる始末。
まぁこれは初々しさということでご愛敬です。
最終的に私が設定していたこの馬用の予算上限を超え6万ドルで落札されました。
ただ、この一回で概ねセリの流れは把握でき、この後は肩の力も抜けました。
競馬もそうですが、やはりデビュー戦よりは一度使った方がパフォーマンスが良くなるのは人間も同じかもしれません。
次はRSSチームとコラボ中の競馬評論家、須田鷹雄さんが購入に挑戦します。
一日目のセリ開始からおよそ3時間経過したお昼すぎ、今年の新種牡馬となるBlue Pointの産駒にチャレンジ。
結果的に9万ドルで須田さんが手を挙げたところで、誰もついてこられなくなり落札が確定。
RSSチーム見事に今年の1歳募集馬を確保しました!
当初10万ドルがリザーブ価格(販売希望最低価格)と聞いていたので、「9万ドルでも落札できたんだ」という感想も漏れていましたが、牧場側としても主取りするよりは1万ドル安くても売ろう、と判断したということでしょう。
逆に言えばこれはお得な買い物だったということです。
落札後は馬の様子を見るとともに、売り手への挨拶、募集用動画の撮影のため、早速馬房に移動します。
RSSチームは日本からも共有オーナーを募集しますので、日本式に体高・胸囲・管囲を測定。
このあたりは日本人向けのきめ細やかなサービスですよね。
そうこうしているうちに、預託予定調教師も合流し、川上さんと共に募集用の動画撮影が行われていました。
尾崎はこの様子をこっそり後ろから撮影する役目。
セリ上げに参加した一頭目、しかも優先順位の高い馬を予算内で落札したRSSチームはこれでかなり余裕が出ました。
RSSはシンジケート会社ですので日本の一口クラブで言えば、牧場系ではなくバイヤー系クラブ、という位置づけに近いと言えます。
募集をかけられる馬が手元にいない状態、つまり狙った馬がことごとく予算を超え、落札馬ゼロとなるのが一番まずいのです。
しかしながら初日の前半で狙っていた馬をきっちり確保したことでRSSにとっては今回のInglis Classicセールでの成功が見えてきました。
私自身はその後二頭に対して手を挙げたものの、予算制約が厳しく残念ながら落札には至らず。
ただ、RSSチームの見事な落札で不思議と落胆はありませんでした。
セリ二日目は朝から会場入りする必要もなかったのですが、せっかくなので朝一便のシャトルバスで早々に会場に到着。
朝8時半ごろから川上さんについてまわり改めて下見を行い、10時からのセリに備えました。RSSチームは貪欲により安く、よりいい馬を!という姿勢で下見を重ねていきます。
二日目のセリが開始されてからも、昨年に比べ主取り(Passed In)が多い印象で、比較的低予算でも多くの馬にチャンスがあるセリが展開されていきます。
RSSチームが手を挙げたものの、リザーブ価格に届かず主取りになった際には牧場側から「価格交渉しませんか?」とオファーが届く一幕も。
こういうのは生でセリに参加するからこそ目撃できるシーンですね。
二日目中盤、RSSとして落札を目論んでいたものの、どう考えても予算を超えそうな一頭、事前のリザーブ価格ヒアリングでは10~15万ドル程度と聞いていたLot345にダメ元で川上さんが手を挙げます。
父はオーストラリアのリーディング第二位を誇るSo You Think。
南半球で活躍後ヨーロッパでも大活躍したあの、So You Thinkの産駒です。
順調に価格は上がっていき、川上さんが8万ドルを表明した後なぜか価格の上昇がストップ。
他に競る人がいなければどんなにいい馬でも価格は上がりません。
(あー、結果的にリザーブ価格に届かず主取りか)とOzakiが残念に思った次の瞬間、鑑定人がハンマーを鳴らします。
ハンマーが鳴るということは主取りではなく落札!?
この瞬間手を挙げていたRSS川上さんはもちろん、1番テーブルに座っていた全員「え!?」という表情に。
リザーブ価格に届いていないため、誰も落札できると思っておらず、落札の喜びよりも戸惑いが先に来ていました。
臨場感あふれる落札シーンをYoutubeで公開してきたRSSチームですら、この時は落札できるとまったく想像していなかったのでカメラを回していませんでした。
そのくらい落札を諦めていた一頭がなんと今手に入ったのです。
この一連の経緯からOzakiが感じたのは、売り手側もいろいろと考えて馬を販売しているのだろうな、ということ。
売却価格は高いほうが当然うれしいでしょうが、売れずに馬を持ち帰るのも考え物。
今回は希望として10万ドル以上で馬を売りたかった(リザーブ価格を提出していた)のだと思いますが、8万ドルで売れるというのも悪くはないと考え、セリ中に8万ドルでの売却にOKを出したのだと思います。
落札後に馬の撮影・測尺に向かった際印象的だったのは売り手牧場の担当女性が終始満面の笑みだったこと。
セリ市に上場した馬が一定以上の価格で売れることの意味がよく分かるシーンでした。
Ozakiも下見中からこの馬はかなり出来が良く、血統的にも魅力満載だったのは実感していました。もしかしたら2024年のビクトリアダービーに駒を進められる器かもしれない、と可能性を感じており既にシェア購入を予約しています。
もし、ご関心お持ちの方はこちらのページで詳細を確認の上RSSにお問合せ下さい。
思いがけない落札ではありましたが、二頭目の募集馬を確保したRSSチームは今回のセールで大収穫だったそうです。
運ばれてくるシャンパン(繰り返しますが無料!)で改めて乾杯し、この数日の苦労をみんなでねぎらいあいます。
日本と季節が正反対のオーストラリア、連日30~35℃の夏空の元、多くの馬を下見した成果が出た瞬間ですので、Ozakiも素直に嬉しかったです。
Ozakiはスケジュールの関係上2日目の途中でセリ会場を退出し、帰国しました。
残念ながら現地で個人所有馬は落札できなかったので、今年はRSSの募集馬に資金を投じることにしたいと思います。
最後に、来年以降オーストラリアのセリへの参加を考えておられる方向けに会場の様子を動画でお伝えします。
購入できるかどうか、は運もありますがオーストラリアのセリを体験したい、まずは勉強してみたい、という方含めてご覧いただければと思います。
もし、実際に現地のセリに参加するということであればRSSチームの皆さんにも気軽に相談下さい。
2023 Inglis Classic Sale 会場内の様子
2023 Inglis Classic Sale セリの様子(Lot222ステファノス産駒取引時)
ゲストライター:Ozaki氏
「面白そう」と感じたことには飛びつくチャレンジャー。コロナ禍でオーストラリアでの競走馬共有をはじめ、準備期間約半年で一頭持ち馬主に。ペーパー獣医師免許ホルダーにして競馬の楽しさを広めることに生きがいを感じる自由人
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