【ネタバレアリ】映画ドリーム・ホースあらすじと現役海外馬主のレビュー。

ジェイ
ジェイ
どうも、ジェイです。
今回は実話が元になっている競走馬シンジケートの映画、ドリーム・ホースについてレビュー記事を書いていこうと思います。
筆者も、映画に出てくるような共有馬主を日本の地方競馬とオーストラリア競馬で行っているため、当事者目線でレビューしていきます。
一部ネタバレを含む内容となっておりますので、まだ観られていない方はご注意ください。

ドリーム・ホースのあらすじ

公式予告動画・YouTubeより

イギリス・ウェールズ、谷あいの小さな村。

夫と二人暮らし、パートと親の介護だけの“何もない人生”を送っていた主婦ジャン(トニ・コレット)。

ジャンは勤務先のバーで、馬主経験のある客人ハワード(ダミアン・ルイス)の話に触発されて競走馬を育てることを思いつき、村のみんなに共同で馬主となることを呼びかける。

週10ポンドずつ出しあって組合馬主となった彼らの夢と希望を乗せ、「ドリームアライアンス(夢の同盟)」と名付けられた馬は、奇跡的にレースに勝ち進み、彼らの人生をも変えていく。

※参考:公式HP




感想&見どころ

率直にこの映画を見終わっての感想は、”やっぱりいつか大レースを勝ちたいな”というものだった。

筆者自身、地方共有馬主や一口馬主でいわゆる条件戦の勝利は複数回経験したが重賞には手が届いていない。

最初はピュアな気持ちで

「G1を勝てる馬を!ジャパンカップだ!凱旋門賞だ!」

と息巻いていたが、いつしかこの趣味の難易度の高さに打ちのめされるあまり…

「コスパのいい馬を!まずは一つ勝てる馬を!」

と目標が下方修正されていた。

最初から馬主はほぼ儲からないことはわかっていた。

馬に出資・共有して夢を買っていたはずなのに…

「レースで好走したら、これで預託料@ヶ月分は大丈夫だな」

といつから目の前のお金のやりくりのことばかりが気になるようになってしまったのだろう?と自問自答しながら映画館で鑑賞していた。

もう一度最初のピュアな気持ちに100%戻ることはもうできないだろう。

しかし、あの時の胸をときめかせた気持ちはやはり忘れてはいけないし、あれが筆者の原点であった。

この原点は頭の片隅にこれをしっかりと置いて、今後馬選びをしていきたいなと思った。

前置きの感想が長くなってしまった、そろそろ見どころの解説に入りたいと思う。

見どころ①手に汗握るレースシーン

ドローンや寄りの定点カメラ、ジョッキー目線カメラなどを切り替えながらの本物の競馬中継さながらの迫力のある描写は圧巻。

共有馬主や一口馬主としてレースを観戦したことがある人ならわかるであろう、デビュー前の胸の高鳴りや、レース中の一喜一憂も丁寧に描いていて、自分の共有馬や出資馬がデビューした時や勝利した時のことを思い出してアドレナリンが出た。

またレースシーンでは”まずはレースを無事に終えてくれ”という馬主の心情もよく捉えて丁寧に描写されていたと思う。

共有馬主や一口馬主の経験がある人なら共感できる部分は多い映画で、楽しく観られるのではないかと思う。

見どころ②人間模様

それ以外にも、競馬(ドリームアライアンス号)だけではなくイギリスの労働者階級や家族の問題など、競馬だけの映画ではなくさまざまな人間のストーリーも楽しめるのも見どころだ。

競走馬を中心としながらその周辺の人間模様を描いている作品と言った方がいいかもしれない。

競馬に詳しくない人でも競馬の専門用語がバンバン出てくるわけでもないし、楽しめる内容になっていると思う。

競馬にさほど詳しくないツレと観にいったが、ツレも「予想以上に面白かった」と満足げだった。

とはいえ、僕が観にいった都内の映画館は「競馬場かここは?」と思うような客層。

他のスクリーンとは明らかに客層が違い、少しだけ女性客もいるような感じだった。

見どころ③組合馬主のリアルな描写

ところで、今回テーマとなっている”馬主”というと貴族の遊びで一般庶民とは縁遠いものに思え、作中の設定は夢物語に見えなくもないが、実はそんなことはない。

たしかに、1人で何頭も馬を所有していたりセリで1日で数億円の大人買いしたりする超大富豪はいる。

一方で、共有馬主や組合馬主など複数人で1頭の馬を共同所有する形が日本でも海外でも一般的に行われていて、これは一般的なサラリーマンでも参加できるようなものもある。

日本では共有馬主より、さらに細かく持分をわけ多くの人が1頭の馬に出資する”一口馬主”が一般的だ。

これらは筆者を含め普通のサラリーマンでも楽しむことができ、ここ数年コロナ禍の影響やウマ娘などの影響もあってか、一口馬主人口は右肩上がりに増えて、盛り上がりを見せている。

映画の中に登場する、ドリームアライアンス号も組合馬主によって管理されている馬。

登場する村人(組合馬主)たちはスーパーやバーで働いている主人公の女性や、年金暮らしの老人などと一般庶民が中心となっている。

筆者は映画なのでもう少し悪い部分を見せない形で組合馬主が描かれているのだろうと考えていたが、思ったよりリアルに起こり得るようなネガティブな側面も描いていて感心した。

史実を元にしているだけあり、共有馬主の協議の様子や意思決定の難しさなど、当事者としても見応えがあるなと感じながら観ていた。

一方このネガティブな側面の描写については、実は一部引っかかる部分もあった。

ここはネタバレを含んでしまうので次の段落でもう少し掘り下げて記述してみたい。

映画を観終わった方やネタバレを気にしない方はぜひ続きも読んでみてほしい。




※ネタバレアリ※共有馬主として感じたこと

ここからはネタバレを含む内容になる、注意してほしい。

まず、馬主として感じたポジティブな側面から紹介しよう。

ポジティブな側面

ドリームアライアンス号は生産から主人公たちが手がけ、作中では入厩まで市民農園で自作した牧場で過ごしている。

買ってきた繁殖牝馬が出産後に死んでしまうことなどのリアリティもさることながら、やはり生産から携わった馬が調教を積んでレースに向かうとなると、セリで購入した馬より一層強い思い入れがあるのであろうなと観ていて感じた。

いやいや、こんなうまくいくことあるのかよ〜という若干のツッコミも入れながら観ていたが、これが史実に基づいているということには本当に驚く。

作中にもあったように、生産はハイリスクなのでなかなか手は出せていないがいつかオーナーブリーディングに挑戦してみたいな、という気持ちになった。

もちろんこれは本当に遠い未来の話だが。

また、先ほどの段落でも触れたが、作中の組合馬主たちの人間模様やキャラクター、意思決定の難しさなどのリアリティが面白かった。

最初は”お金ではなく胸の高鳴り”で組合馬主をと話していたのに、いざ活躍すると”高額トレードの話に乗るべきだ”とか”競馬場で安楽死させれば保険が適応される”とか、目先のお金のことに意識が向いてしまっている。

まさに今の自分ではないかと思ったし、馬主というのは結局のところ、そういう生き物なのかもしれない。

競走馬はペットではなく経済動物としてドライな判断を求められることもあるのだ。

共有馬シンジケートの場合意思決定は限られた場面での投票のみだが、個人共有をしている馬については本当にさまざまな場面で難しい正解のない選択を迫られる。

これに関連して、筆者は作中でもやもやした部分があった。

ネガティブな側面

そもそも、個人で行う共有馬主はしばしば揉めると聞く。

理由は単純で意思決定が難しいのと、その決定で大きなお金が動き、その結果が如実に成績や賞金に現れるからだ。

そのため、共有馬主間の意思決定には特に繊細な過程が必要なのだ。

その繊細な意思決定の場面は、今回の作品はしっかり描いていない感じが気になった。

例えば、最初の組合馬主になるという協議の際に”最終意思決定は誰がするんだ?”という話になった時、作中では結局誰が決定権を持つのか明示されず、その後は生産者かつ発起人の主人公が決定権を持って行使している。

その後もトレードの話や大怪我をした場合の進退について、本来なら組合馬主での投票制で決めるべきような内容を主人公が単独の考えで推し進めていくような場面があった(史実は違うのかもしれないが)。

これはリアルだったら絶対揉めるだろうなと思った。

作中でも軽く揉めてたけど。

ここは、馬主経験のある人であれば誰もが『ん?』と思うであろう。

また、ストーリーを凝縮して2時間にまとめているという作りなので、例えば調教のシーンなど描かれていない部分も多く、ちょっと端折られている感や唐突感を感じるところは人によってはあるかもしれない。




終わりに

全体的には満足感は非常に高く席数の少ない小さいスクリーンだったこともあり始まるまで”本当に面白いのか?”と若干不安だったが、そんな不安は見事に吹き飛ばしてくれた。

これまで正直強く意識していなかったが、オーストラリアの共有馬主で、エリザベス女王杯やジャパンCなどのレースにいつか殴り込みに行きたいなという思いは強くなった。

作中の主人公たちのように、日本の競馬場で同じ共有馬主たちと抱き合って喜びを分かち合える日が来ることを願ってこのレビューの結びの言葉とする。


ジェイ

現役地方&海外馬主・競馬ライター

登録者5000人超え&累計再生250万回超えの一口馬主YouTuber。豪州競馬会員制コミュニティJJ Racing Club 共同代表。社会人1年目から一口馬主を始め、キャロット・シルク・ノルマン・ロード・DMMバヌーシーの5クラブに入会。地方個人共有とRSS や中條厩舎の豪州共有に加え北米MRHでマイクロシェアを行う。血統スタッツや馬体・歩様を重視していて代表馬はトゥルーフェアリー、ロードヴァレンチ、ミスティックロア等。

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