【種牡馬分析】ゴールドシップ産駒のニックス&アンチニックスは? byM石土井

M石土井
M石土井
皆さんこんにちは、ゴルシ産駒を研究しているM石土井です。
前編では、ゴールドシップの血統について詳しく解説しました。
後編では、ゴルシ産駒のニックス、アンチニックスについて解説していきます、よろしくお願いします。
↑前編の記事はこちら

相似インブリード

では、ゴールドシップはインブリードしない方が良いのかというと、実は深いところでメジャー血統とインブリードするし、した方がいいのです。

もう一度母方のポイントフラッグの血統表を見てみましょう。

画像
ポイントフラッグ

メジロマックイーンは、現代競馬では5代血統表内でインブリードするのは不可能なほどの異形血脈なので一旦検討から外します。

私のゴルシ血統論で一番簡単な考え方として

「ゴールドシップの母母父プルラリズムをどう刺激するか」

と言うモノがあります。

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母母パストラリズムの血統表

ザミンストレルと相似インブリード

ゴールドシップから見て母母父父のザミンストレル(The Minstrel)の血統をご覧ください。
父ノーザンダンサー
母父ヴィクトリアパーク

この配合で日本でとても有名な馬がいます。

また


父ノーザンダンサー
母母フレーミングページ


こちらの組み合わせもとても有名な馬がいます。

それがこちら

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図の中央がザミンストレル

ザミンストレルを起点として

ノーザンテーストとは父と母父が同じ(3/4同血)
ニジンスキー父が同じで母と祖母が同一(叔父甥)となります。

このような相似インブリードは、一般的なインブリードより、より強い影響を与えると言われます。

その理由は、もちろん「血統構成が似ているのであれば同じ様な効果をもたらす」と言って良いと思いますが

『種牡馬になり血統表に名を残すレベルの馬を複数産んだ活力のある名牝の血を違うルートで継承する為』

と言われることもあります。

そして、その2頭でも特に影響が大きいのがニジンスキー

黄金ニックス ニジンスキーとバックパサー

2023年4月末時点のゴルシ産駒獲得賞金トップ10の内、6頭がニジンスキー(N)を持っています。

  1. ユーバーレーベン
  2. ウインキートス
  3. ウインマイティー N
  4. マカオンドール
  5. ジュニパーベリー N
  6. プリュムドール N
  7. エドノフェリーチェ N
  8. ヴェローチェオロ N
  9. ゴールデンハインド
  10. シュアーヴアリア N

逆に、この中でノーザンテーストを持つのはシュアーヴアリアだけです。

つまり、同じような相似インブリードを持つにも関わらず、ニジンスキーにだけ強烈なニックスが生じていることになります。

これにはいくつか想定される答えがありますが、一番わかりやすいものとして、もう一度トップ10をご覧ください。

  1. ユーバーレーベン
  2. ウインキートス 
  3. ウインマイティー N 
  4. マカオンドール
  5. ジュニパーベリー B・N
  6. プリュムドール N
  7. エドノフェリーチェ N
  8. ヴェローチェオロ N
  9. ゴールデンハインド 
  10. シュアーヴアリア N

ニジンスキーを持っている馬。

はもう一頭のニックス「バックパサー」を持っている馬です。

ニジンスキー、またはバックパサーを持っている馬は10頭中8頭にのぼります。

急に出てきたこのバックパサーですが、この血統表を見ていただけると納得できると思います。

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バックパサー×フレーミングページの架空血統表

詳細な説明は省きますが
バックパサーは年間13連勝、マイルで世界レコード樹立など偉業を残したアメリカを代表する名馬。
フレーミングページは先程出たニジンスキー・ザミンストレルの母・祖母で、本馬もケンタッキーオークス2着、カナダダービー(クイーンズプレート)1着という北米の名馬。

その2頭の血統は驚くほど似ています。
Menow
Bull Dog(Tedy)
Man o’ War
Blue Larkspour
1940年ごろまでのアメリカを代表する名馬で名種牡馬たちです。

昔のアメリカ競馬の基本形は現代と変わりません。
・小回りで左回りの競馬場
・強者こそハンデを背負って勝つべし
・最後まで競り勝ち続けたものが勝者
さらに、当時の特徴として
・連戦を耐え抜くタフネス

つまり
「小回りをまくる様な競馬が上手く、荒れた力のいる馬場に強く、バテないスタミナ。使い詰めでも元気」
となり、この血を増やすことでゴールドシップの持つ特徴を強化する事ができます。

ニックスとは、好相性となる理由があるのです。

私のゴールドシップ論の根幹を成すのが

「バックパサー的なオールドアメリカン血統」(BP血統)

をどれだけ持っているかとなります。

そして、プルラリズムの母父ロベルトにもこのBP血統は多く含まれており、更に確度を高めていきます。

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ロベルトの血統表

ロベルトはブルドッグ=サーギャラハッド全兄弟の影響が強いため、ニジンスキー≒バックパサーよりもパワー型に振れることが多いです。

つまり、プルラリズムをどう刺激するかとは、いかにBP血統を足していくか

ということになります。

ニックス紹介

長くなってまいりましたので、ここからは簡単にニックス紹介をしていきます。



☆ニジンスキー・バックパサー

これはここまでの記事参照ですね。

①ロージズインメイ


ロージズインメイはゴルシファンの間では「お義父さん」と呼ばれるほどの好相性を残しています。
2023年4月末時点でゴルシ×ロージズ産駒は15頭中央デビューしており、実に11頭(73%)が勝ち上がっています。
未勝利の4頭中3頭は地方で勝っており、残り1頭も現3歳で中央5着の実績があるため、十分勝ち上がる可能性を残しています。

なぜここまでの活躍ができるのか少し踏み込んで考察をすると、大きく2つ考えられます。

1.前向きさ&パワー
ロージズインメイはドバイワールドカップを勝った名馬で、岡田総帥の導入したヘイロー系種牡馬です。
ただ、母父プリンスキロ系ということもあり、ヘイロー系にしてはかなりパワーに特化しています。

ゴールドシップ産駒は真面目さに欠ける馬も少なくなく、また後肢の緩さからスタートで後手を踏み、促しても進まないということが多発します。

母父ロージズ産駒は総じて前向きさに優れ、スタートは出るし促せば進むし人間に反抗しない素直さを持っています。

肉体的・精神的な部分でゴールドシップを底支えできていると言えるでしょう。

2.逆説ロージズニックス
ロージズインメイはニックスであることに間違いはないのですが、この問題の答えはそんな単純ではないようです。

ロージズインメイ産駒の活躍馬の血統を見て見ると、ある共通点が見えてきます。

・ナスルーラが濃い
・ミスプロが濃い
・ヘイローが濃い


この理由はいくつかあります。
まずロージズインメイの血統を見てください。

画像
ロージズインメイ
  1. ヘイローが遠く、スピード血統が足りない
  2. 非常にアウトブリード

以上のことが見えてきます。

この2点は欠点になりやすいですが、ゴールドシップには奇跡的な追い風として作用しました。

では実際にロージズインメイを配合する際の考察をしていきましょう。

①ヘイローが遠くスピードが足りないので、スピード血統を足したいですね。
お手軽なのはヘイローやターントゥ系を配してもう一度ヘイローらしい軽いスピードを隔世遺伝させることでしょう。

②非常にアウトブリードでは、血統界でよく言われる「緊張と緩和」を作りやすいといえます。

ロージズは自身の中にほとんどインブリードをしておらず、血統プール的には相当な「緩さ」を抱えています。
こういった血統のお相手には、逆にインブリードでガチガチに「緊張」し固まった馬がよく合います。

(今回はゴールドシップの記事なので詳細までは紹介しませんが、ぜひロージズインメイの活躍産駒の血統表を見てみてください。
5代血統表ではわからないので8代血統表などを見ていただくと、露骨なほどにナスルーラ、ミスプロ、ヘイローでガチガチな牝馬の子ばかりだと気がつくでしょう。)

つまり、ロージズインメイと配合された馬は、ヘイロー(ターントゥ系)やナスルーラなどのスピード血統で緊張した馬が多かったということになります。

そして、スピード血統で緊張した血統ゴールドシップにとって欲しくてたまらない血だったのです。

主なその血統たちを書いていきます。

②ターントゥ系


ターントゥは、ヘイローやロベルトを通じて日本に大きな影響を与えています。
ゴールドシップに合うターントゥ系を紹介します。

・デヴィルズバッグ=グロリアスソング
この2頭は全きょうだいで、デヴィルズバッグはロージズインメイの父父になります。
デヴィルズバッグ産駒で有名なのはタイキシャトルですね。
唯一の母父タイキシャトルからはOP馬のヴェローチェオロが出ています。
また、グロリアスソングの血を引くゴールドシップ産駒はあまりいませんが、エリダヌスやシロノクミキョクが中央で勝ち星を上げています。

・ロベルト
上記には書いた通り、BP血統からパワー系を抽出したような血統です。
ロベルトはたしかに能力を向上させるのですが、BP血統と比べると勝ちきれない善戦マンが多くなる印象で、ロベルトに加えスピード血統をもう1エッセンス足したくなる印象です。

母父ロベルト直径
 エドノフェリーチェ・マイネルグロン・ アインゲーブングなど
母母父ロベルト系
 マイネルメサイヤなど

・ヘイロー≒サーアイヴァー≒ドローン
≒とは相似インブリードするときによく使われる記号です。
へイローとサーアイヴァー・ドローンという馬は非常に血統構成が似ており、特徴はいずれも「スピード&キレ」です。

ディープインパクトはヘイロー≒サーアイヴァーの2×4
ダンシングブレーヴは母父がドローン

この2頭を見ればスピードとキレいう意味が納得いただけるかと思います。

これらの血をうまくエッセンスとして取り入れられると非常に上質な産駒に仕上がります。

③欧州系ナスルーラ

ナスルーラはスピードの持続を特徴とします。
実はゴールドシップはナスルーラが多く、5代血統表内には見えませんが、5本入っています。

ナスルーラは現在、主に「ダートの米国系ナスルーラ」と「芝の欧州系ナスルーラ」に分かれます。

ゴールドシップは芝への適性が極端に高く、米国系ナスルーラを配すると良さを消し合ったり、トビが大きすぎてスピードアップできない事が多いです。
逆に欧州系ナスルーラは持続するスピード感がある馬が多く、中でも小回りを外を回しながら加速して行く戦い方で強くなる傾向があります。
特にミルリーフ~ダルシャーンあたりの系統は貯めて末脚を伸ばす方向に強化されるため、血統表にあると期待したくなります。

主な欧州系ナスルーラ…ミルリーフ、トニービン、コジーン、プリンスリーギフト、タマモクロスなど。

欧州系ナスルーラ
 ダルシャーン持ち マカオンドール・アオラキなど
 その他 ウインエアフォルク・シーグラスなど

完成形の血統

ここまでゴルシニックスを語ってきましたが、完成された血統の馬が既に実績を上げています。

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ユーバーレーベン

オークス馬ユーバーレーベンです。

母父ロージズインメイ
母母父ブライアンズタイム(ターントゥ系ロベルト・BP血統)
母母母父ザビール(ターントゥ系サーアイヴァー)
母母母母父ミルリーフ(欧州系ナスルーラ)

まさにニックスで固められた、ニックスのニックスによるゴルシのための配合です。

レーベンのマイネプリテンダー系は岡田一族の根幹牝馬なので、プリテンダー牝系で同じような配合のゴルシ産駒が一杯います。
ぜひチェックしてください!

ゴールドシップ×マイネプリテンダー牝系

ユーバーレーベン
マイネルエンペラー
マイネルグロン
ヴァイルマティ など

★番外編・ダートを走るには

ゴールドシップは非常にダートが苦手です。
基本的にパワーのない産駒が多く、また芝の平均勝利距離は2000mを超えている圧倒的ステイヤーであるのに、ダートでは2000m級のレースが少ないのもその原因でしょう。

出走内訳
芝 1832戦 124勝
ダ  371戦  24勝

出走も勝ち星も約5倍の差があります。
これは挑戦すらしてないと言う事で、それだけゴールドシップはダートに向かない事を示しています。

そんな不利な状況を跳ね返し、ダートで勝ち星を上げたのは16頭。
芝でのBP血統のように、ダートで走る産駒にはかなりの血統の偏りがあります。

*ダートで勝ち星を上げた16頭
  馬名     特徴的な血統
マイネルキング  なし
マリオマッハー  スペシャル
セイウンクルーズ スペシャル
ファルコンミノル スペシャル
サノラキ     キングヘイロー
ジーマックス   ダンジグ・キングヘイロー
ダンツエスプリ  ダンジグ
ルーパステソーロ エーピーインディ・ダンジグ
マンマリアーレ  エーピーインディ
イエローウィン  デピュティミニスター(クロフネの父父)
オルノア     クロフネ・スペシャル
タカサンフェイス クロフネ・ダンジグ
ウインメイフラワークロフネ・ダンジグ
ツインシップ   クロフネ・ダンジグ
メガゴールド   クロフネ・ダンジグ

下4頭はウッドシップ産駒であり、ゴルシ産駒を絶対ダートを走らせます。
ウッドシップ産駒はある意味異常値なのですが、それを除いたとしても

■大飛アメリカ血統
・クロフネ
・エーピーインディ
■パワー系ノーザンダンサー
・スペシャル(サドラーズウェルズ・フェアリーキング・ヌレイエフ)
・ダンジグ
■ヘイロー≒サーアイヴァー≒ドローン
・キングヘイロー

 

いずれかの血を持っていないとダートで勝つことは難しいと言えるでしょう。

馬券検討の際や1口で出資したいとお考えの際には頭に入れておいてください。

アンチニックス

逆に、あまり良くない血もあります。

・ストームキャット・ミスタープロスペクター
ディープインパクトやオルフェーヴルには必須の血統ですが、ゴールドシップには向きません。
2頭ともナスルーラやBP血統を持っていますが、どうにも柔らかくなりすぎるようです。
また、スピードが強化される代わりに、マイルで勝てるほどのスピードではなく、スタミナが削がれて2600mは走りきれないと言った産駒になりがちです。

・ニックス血統以外
上記に上げたニックス血統はいくらあってもいいし、ユーバーレーベンは完全にニックス血統だけで構成されています。

ゴールドシップは長所をひたすら伸ばす配合が良く、走る馬は
・BP血統やターントゥで能力の絶対値を上げる
・欧州血統でローカル長距離を絶対に勝つ

この2パターンだけと断言しても良いでしょう。

つまり、これらに該当しない血統は産駒成績にはつながらず、欠点も薄くなる代わりに長所も薄くなってしまいます。

そのため、どれだけ母馬がスピード血統で緊張できているか、ニックス血統以外を少なくできるかがキモになっていきます。

まとめ

ゴールドシップの血統的な魅力について書いてきましたが、ついつい筆が乗りすぎてしまいました。
最初に血統初心者の方にもわかるように、と書きはじめたのに、完全にマニアックな話にそれてしまい反省です。

実はこのあとにもボツにしたもっとマニアック話がありますので、どこかで発表できればと思います。

では、今回の記事を簡単にまとめます。

  • ゴールドシップはマイナー血統の塊
  • インブリードは5代血統表の外にある
  • BP血統を足そう
  • ニックスで固めよう
  • ダートを走る馬は偏る

馬券的にも一口的にも特徴がとてつもなく偏った馬がゴールドシップです。

そのうえ、子供たちは頭が良かったり、暴君だったり、ブヒブヒ言ったりかわいいが溢れます。

是非一度、ゴールドシップ産駒に注目してみてください!

ゲストライター:M石土井

Twitter⇨@keiba_mishid01

一口馬主を京都サラブレッド、YGG、広尾、DMM、ノルマンディーなどで楽しんでいる、ゴルシ産駒研究者。noteにてゴルシ産駒にまつわる投稿を行っている。血統分析に重きを置くスタイルで、代表出資馬はドライスタウトやグランベルナデット。ゴールドシップ産駒ではオルノアやブルーローズシップなどに出資している。

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2 Responses

  1. […] 京都サラブレッドなどで一口馬主を楽しんでいる、M石土井です。 私はゴールドシップ産駒が大好きで、日夜研究に明け暮れています。 今回はジェイさんから依頼を受け、ゴールドシップ産駒について分析する記事を投稿していきます。 ぜひ最後までお読みください! 【種牡馬分析】ゴールドシップ産駒のニックス&アンチニックスは? byM… […]

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