今回は競走馬のプール調教(水泳)についてオーストラリアの現役調教師、中條先生にお伺いしました。
調教師ならではの貴重な生の声をたくさんお届けいたしますので、ぜひ最後までご覧ください。
<中條調教師過去記事>
中條調教師Twitter:@DChujo
プール調教(水泳)のメリット
ジェイ:いつも登場いただきありがとうございます。サララボでお馴染み?になりつつあるオーストラリアの中條調教師です。よろしくお願いします。今回は中條厩舎の共有馬トゥルーが水泳をしていたので、競走馬のプール調教(水泳)について、どんなメリットがあるかお伺いしていきます。よろしくお願いします。
中條師:よろしくお願いします。
まず水泳のメリットはベタなんですけど、脚元に負担をかけずにフィットネスレベルを上げられる、負荷をかけられるというのが一番大きいですね。
全身運動なので、心肺機能強化も期待できます。
ジェイ:なるほど、私も野球をしていて足を怪我した時リハビリとして水泳をしていた記憶があります。他にもプール調教(水泳)で期待できるものはありますか?
中條師:馬のリフレッシュ的な部分もありますね。
毎日ぐるぐるコースを回るだけじゃなくて、水泳を入れてあげることで調教のマンネリ化を防ぎます。
また古馬だと、追い切りで負荷をかけすぎたくない場合や脚元的に強い調教できない時にフィットネスをあげたり、調子をキープするためにコース調教の後に水泳を入れたりという使い方をします。
また、馬によっては調教でコズミが出る馬がいるのですが、そういう馬は水泳をさせてから調教に乗ると、コズまないことが多いです。
ジェイ:それは初めて聞きました。なぜ水泳をするとコズまないのですか?
中條師:これはぶっちゃけ解明されていないというか、コズミ自体実は原因がしっかり判明していないんです。
そのため、都市伝説的なものもあるのかもしれませんが、オーストラリアでは、水泳させてから走らせるとコズまないというのが調教師の間で一般的に言われています。
実際に、厩舎の所属馬たちでも水泳の後だとコズまないなという実感はありますね。
水泳は馬を強くする!?
ジェイ:なるほど、現場レベルでは効果を実感しているということですね。コンディショニング以外に、そもそもプール調教(水泳)で競走馬の能力を高めていくことも可能なのでしょうか?
中條師:はい、実はうちの厩舎の理学療法士は、馬の内股の筋肉が早く走るための筋肉で、水泳で馬が動く時の足の動きが内股の筋肉を鍛えると言っています。
フラットワーク以上にいい効果があるということで水泳を積極的にやってくださいと言われていますね。
理学療法士曰く、この内股の筋肉は走る時にはあんまり鍛えられないらしいんです。
早く走らせるための馬の作り方のためのトレーニングとして理学療法士は非常に水泳は重要だと言っていますね。
ジェイ:なるほど、ということは中條さんの厩舎の馬は積極的に水泳を取り入れているのでしょうか?
中條師:基本的に毎週2〜3回は全頭泳いでいますね。
ジェイ:え!?そんなに泳いでいるんですか!?トゥルーのような新馬だけでなく古馬もですか?
中條師:はい、むしろ古馬の方が多いですね。
レース後は、例えば3日間水泳だけとかありますね。体をほぐす意味も兼ねて。
疲れが残っていて、人を乗せてコースで走らせるには早いなという時には、水泳だけの時は普通にありますね。
ジェイ:想像以上に頻繁に泳いでいたんですね、中條厩舎の馬たちは。動画で共有馬が泳いでいるのを拝見しましたが、あれは川なんですか?湖ですか?
中條師:厩舎を出て道路を挟んですぐ反対側にある、川ですね。
海に近くて海水が混ざっているようなところで、泳いでいったら海に出られるくらいです。
これだけ近くに川があってすぐ泳げるというのはバラナ競馬場(中條厩舎所在地)の強みですよね。
ジェイ:なるほど、水泳にはもってこいの立地ですね。オーストラリアはビーチ調教であったり、日本より水泳している馬が多いような気がするのですが?
こっちは、川が多いですからね(笑)
川や海で泳がなくても、ウォーキングマシーンに水を入れて胸元くらいまで、水の中を歩くウォーターウォーカーというのがあって、これが今オーストラリアで流行ってますね。
プール調教(水泳)の注意点
ジェイ:そんな機械があるんですね、面白いです。プール調教(水泳)をする上で注意点や気をつけることは何かあるんですか?
中條師:オープンスペースなので、放馬したら街まで走って行ってしまうのでそこは気をつけています。
あとは泳げないカナズチの馬がたまにいるんです(笑)そこは気をつけますね。
あとは、若馬や初めての馬は最初躊躇するんです、川に入る時。
でも入ると決めるとエイっと飛び込んだりするので、ついていかないといけないというか。
慣れたらボートでやるんですけど、最初は一緒に入って行って一緒に泳ぎますね。
ジェイ:中條調教師も泳ぐんですか?
中條師:冬は厳しいですけどあったかい時は一緒に僕も泳いでいます。
あとはサメがいるので、サメに気をつけないといけないですね(笑)
馬は多分大丈夫ですが人は気をつけないといけないサイズのサメがいるんですよ、あの川。
ジェイ:なんか、思ってた方向性じゃない注意点ですね(笑)サメですか…?
ええ、ブルシャーク(Bull shark)という凶暴なサメがいるんですよね。
今までうちの馬が襲われたことはありませんし、厩舎の人間も襲われたことは幸いありません。
ただ、海では人が襲われたことはあったみたいですよ、怖いですよね。
速く泳ぐ馬=強い?
ジェイ:そうなんですね、それは気をつけて川に入ってくださいね。あの穏やかそうに見えた川にサメがいたとは…。そういえば、泳ぐのが速い馬もいるんですか?
中條師:はい、泳ぐのが速い馬はいますね。
統計を取ったわけではなくて経験則ですが、泳ぐの速い馬は足も速いです。
馬力があるというか。
ジェイ:共有馬のトゥルーはどうでした?
中條師:トゥルーは、、、普通でしたね(笑)
速い馬はボートに鼻が当たるくらいなんです。
ガンガン泳いでくる馬もいます。
ジェイ:まぁ、陸上で走るのが速ければと願います(笑)ところで、中條調教師のSNSには上裸でボートを漕いでいるおじさんがたまに出ているけどあの人は一体何者なんですか…?
中條師:彼は川の住民ですね(笑)
うちの厩舎の隣に住んでいる元調教師で、今は引退しているんです。
現役の調教師時代はとにかく水泳で仕上げる調教師として有名で、所属馬はほとんど水泳で調教して、あんまりコースでは乗らなかったそうですよ。
だからボート漕ぐのがとても上手いので、厩舎でお願いをして馬を泳がせるのを頼んでやってもらっているんです。
ジェイ:ボートを漕ぐテクニック的なものがあるんですか?
中條師:めちゃくちゃあります。あれは難しいんです。
僕も何度かやりましたが、馬をコントロールしつつボートを漕がなきゃいけないので。
馬がボートの真後ろにいないとオールを漕げないので、馬が横に来てしまったりするとボートも漕げなくなってしまいます。
風が強い日は遠くに行って帰ってくるだけでも大変で、何度か挑戦したんですが難しくて自分でやるのはもうやめました(笑)
ジェイ:なるほど、それであの上裸の元調教師の方にお願いしているわけですね。
お忙しい中今回もお話を聞かせていただきありがとうございました。
次回は今年行われたMagic Millions 2023 Gold Coast Yearling Sale についてお伺いしていきます。お楽しみに!
現役地方&海外馬主・競馬ライター
登録者5000人超え&累計再生250万回超えの一口馬主YouTuber。豪州競馬会員制コミュニティJJ Racing Club 共同代表。社会人1年目から一口馬主を始め、キャロット・シルク・ノルマン・ロード・DMMバヌーシーの5クラブに入会。地方個人共有とRSS や中條厩舎の豪州共有に加え北米MRHでマイクロシェアを行う。血統スタッツや馬体・歩様を重視していて代表馬はトゥルーフェアリー、ロードヴァレンチ、ミスティックロア等。
—最近の私––
Bluetoothでスマホと接続可能なスピーカー。重低音がとても強調されるので洋楽やアップテンポな曲が好きな私のお気に入り。防水機能つきなのでお風呂に持ち込んで音楽を聴きながら本を読むのが毎日の楽しみ。
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