<前回の治郎丸敬之さんのインタビュー記事>
坂上 明大さん プロフィール
YouTubeチャンネル「競馬オタク」代表。元競馬専門紙トラックマンで現在は川崎競馬のパドック解説や各種メディアにて活躍中。著書に『血統のトリセツ』(KADOKAWA)
パドックで重要な「バランス」
ーー坂上さんにはいつもサラブレッド研究会(競馬オタクチャンネルYouTubeメンバーシップ)で障害予想を掲載していただくなどお世話になっています。今日はサラブレッドのことはもちろん、あまり語られることのない坂上さん自身のことについてもお伺いしていきます!どうぞよろしくお願いいたします。
坂上明大氏(以下敬称略) よろしくお願いいたします!
ーーまず読者の皆さんが気になるであろう馬体からお伺いします。坂上さんは川崎競馬にてパドック解説をされるなど、馬体について語られる場面も多いです。普段現役の競走馬を見る際に重視されているポイントはありますか?
坂上 基本的にはバランスです。パーツごとに優れている箇所があっても連動しないことにはどうにもならないので、形にしても歩様の流れにしても全てが連動して良いバランスかどうかっていうのが一番だと思います。それはどこかに弱点があったとしてもバランスが整っていればある程度は走れるっていう言い方もできますね。
ーーバランスの良さで個別の弱点を補えているかも重要な要素なんですね。予想する際は当日出走するメンバー同士の横の比較と、その馬自身のこれまでと比べた縦の比較、どちらを重視しますか?
坂上 気になる馬とかは追っていますが、トレセンでも各馬を見ているトラックマンの方ほど見れている自信はないですね。ただ、血統、馬体、コースの特徴などをリンクさせられるのは自分の強みだと思うので、パドック等では自分の視点からしか見えないものを活かせるように努めています。
ーーサララボはデビュー前の馬に関心が強い読者の方も多いのでこちらもお聞きしましょう。セリや一口などのデビュー前の馬に関してはどうでしょうか?
坂上 まずは柔軟性ですかね。身体が固まってくるのは先の話なんで、1歳馬にとっては柔軟性が重要、と某馬主さんがお話されてました(笑)
ーーなるほど(笑)では、1歳馬と現役馬の見方で特に異なる点はありますか?
坂上 1歳馬ってレースに出るためのトレーニングを積む前の馬なので、身体の上に何が乗っているかはあまり気にしません。骨格のバランスに関してもこれからどれだけ成長するかっていう話になってきますから難しいですよね。
ーー難しいですね。血統も絡めて考えますか?
坂上 もちろんです。ウォーキング映像や立ち写真から見て、こういう血統だろうなって。そこから血統表を見てこれだったら大丈夫だなって考えたりしますね。あと1歳馬は馬体のミスの方を重視して見ることも多いですね。
ーーミスですか。マイナスポイントっていうことですよね。あまり馬を見ることに慣れていないと一概にミスといってもどれくらいの割引が必要なのかって難しかったりしますよね。
坂上 選択肢はいっぱいあると思うんで価格とのバランスがとれているかってところが重要だと思いますね。マイナスがあったとしてもそれに対して価格が寄り添っているなら問題ないとも考えられます。
血統において重要な繁殖牝馬
ーー続いては血統のお話です。配合を見る際に最も重要視されるポイントを教えてください。
坂上 一番は繁殖牝馬ですね。どの種牡馬の産駒だっていうことより繁殖牝馬の質が一番大事だと思います。それは繁殖牝馬の血統配合もそうですし牝系もそうです。やっぱり生産の裏テーマってどれだけ良質な繁殖を作れるかだと思うので。その次に血統のバランスですね。どうしても種牡馬から見てしまいがちですが、種牡馬にとっても繁殖にとってもその馬が何を求めているかを考えることが重要だと思います。
競馬オタク坂上明大の原点は?
ーーありがとうございます。坂上さん自身のことについて教えてください。私も4、5年前から坂上さんのことは存じ上げていますが、あんまりプライベートなことは知りません。競馬を始められたのはいつ頃なんですか?
坂上 学生の時に友人と麻雀やってたんですけど、なんか違うことやろうってなって笠松競馬場に行ったのがスタートですね。実際最初に競馬を見たのは物心つく前とかだったとは思うんですけど。
ーー馬券を買ったのは笠松が最初ってことですかね?
坂上 そうです。なんなら麻雀にはまってたので仲間内では自分が一番競馬を嫌がってました(笑)
ーーそこからトラックマンになるってかなり一足飛びだと思うんですけど、その過程になにがあったのでしょう。
坂上 ウマバラのMCされているムラコさんが月島競馬サークルっていうYouTubeチャンネルを運営されてて、大学3年か4年の時にそのチャンネルのオフ会に行ったんです。そこで鈴木ショータくん(元TM)と出会って、彼は当時から色々活動してたんですけど、トラックマンになるんだっていう話を聞いたのがきっかけです。その時まではトラックマンっていうのが自分の現実的な選択肢として目の前になかったんで、そういう道があるって聞いたら資格の勉強とか手につかなくなっちゃいましたね(笑)
ーーなるほど!その出会いで一気に切り替えられたんですね。競馬ブックを退社されたあとすぐに現在の活動を始めたんですか?
坂上 そうですね。元々自分でなにかやりたいっていうのはあったんですけど、競馬業界に入らないとどうにもならないなっていう思いはありました。最終面接で「給料はいりません」なんて言って、全員に笑われたのもいい思い出です(笑)思ったよりも早く辞める形にはなってしまいましたが、たくさんのことを勉強させていただいた会社と先輩方には感謝しかありません。
ーーすごい強い意志ですね。さすが坂上さんです(笑)
見据える未来 今後の展望
ーーでは最後にYouTuberとして、ないしは競馬に関する情報発信者としての今後の展望を教えてください。
坂上 正直、YouTuberとしての展望は特にないですね。
ーーすいません。坂上さんの展望で僕が言うのはあれなんですけど一回オフ会やらせてください(笑)
坂上 オフ会はそうですね(笑) 逆に言えばサラ研(競馬オタクチャンネルYouTubeメンバーシップ)がなかったらYouTubeを続けていないかもしれません。スキルや知識、経験を積み上げていくのが楽しいタイプの人間なんで、予想家っていう路線はずいぶん前に消してしまいました。逆にそういう選択をしたからこそ得られたモノも多いですし、徐々にではありますが自分の動きやすい環境も整ってきたかと思います。
ーーその環境を作り上げられるのは坂上さんの探求心あってこそですね。
坂上 一つテーマにしているのは、誰と喋っても面白いなって思ってもらえるように準備しておくことです。例えばパドック解説ならパドックの中で興味深い話ができるように、生産者さんと話すなら生産の中で面白い話ができるように。得意げに自分の土俵で話をするんじゃなくて、聞き手の土俵で1つでも新しい発見があるような話ができるように、とは常に考えています。あと、展望って言い方だと、血統は世界の共通言語なので、世界に出ることができるぐらい人間でなくては、とは思っていますね。
ーーワールドワイドですね。今は日本の血統も世界に発信していける時代ですよね。
坂上 日本の血統が世界のスタートラインに立ったところですよね。サンデーサイレンスってやっぱり偉大で、Northern Dancerを持っていなかったっていうのはやっぱり大きいんだと思います。
ーーNorthern Dancerは当時世界で大流行の血脈だったと思いますが、それを持っていなかったのが良かったと。
坂上 そうです。時代にも合っていたんだと思います。Northern Dancerを持っている繁殖に求められていましたよね。だから2代目くらいまでは存在感の強さを感じます。その時代の繁殖が何を求めているかって重要なポイントだと思うんですよね。
ーーなるほど。飽和しかけていた中で現れたわけですもんね。ごめんなさい、最後ついつい話が逸れて突っ込んで聞いてしまいました。今日はありがとうございました。
坂上 こちらこそありがとうございました。
牝系研究家・競馬ライター
牝系こそがサラブレッドの根幹であると考え、日夜サラブレッドファミリーの研究と最適な配合の追求を行う。競馬予想、血統解説、コラムなどを通じて競馬の魅力を多くの人に伝えることをモットーとしている。SPAIA競馬でも記事連載中。
—最近の私––
最近買ってよかったもの。次世代型猫用全自動トイレで時間と手間が格段に変わった。これまで猫が散らした砂を犬が食べてしまうことがあったが、これを導入してから清潔が保たれている。
No responses yet