今回は凱旋門賞2023予想記事の第一弾、スルーセブンシーズの勝算についてです。
よろしくお願いします、当日はYouTubeで同時視聴LIVEも行いますのでぜひ遊びにきてください。
凱旋門賞概要
凱旋門賞はフランスのパリロンシャン競馬場で行われる芝2400mのG1レースです。昨年ドウデュースが挑戦した前哨戦のG2ニエル賞などと同じ大コースを使用します。芝は洋芝です。
向こう正面の約1000mの直線の間に10mの勾配を駆け上がり、その後すぐに下りに切り替わる、高低差が大きいコースです。
この高低差は、中山競馬場の約2倍です。隊列が決まるのが早く、ポジション争いが熾烈なこともポイントです。
力の求められる洋芝に加え、直線の前には約250mの「フォルスストレート」も鬼門です。
下り坂でスピードがついた馬たちはこのフォルスストレートでスパートをかけてしまうこともあるといいます。しっかりと我慢をきかせる必要があります。
フォルスストレートを抜けた先の最後の直線は東京競馬場とほぼ同じ、約530mの長い直線になります。
凱旋門賞はオープンストレッチといって、最後の直線は内ラチ沿いが約6m広がる構造になっています。進路を広くして内外の差をなくすためのギミックと言われています。
当日まで保護されていた内側の芝が痛んでいないため伸びることが多く、多くの馬は広がったインに寄っていきます。
凱旋門賞の季節には気候的に雨が多く、渋った馬場での開催が多い印象があります。
私が凱旋門賞を現地観戦した改修直後の2018年も小雨が降っていました。
※昨年は重馬場で雨の中の開催でした。今年は天気予報的には馬場状態は良さそうですが、フランスギャロが散水することで日本でいうところの稍重くらいになる可能性はあります。散水情報は要注意です
日本馬ではこれまでエルコンドルパサー、ナカヤマフェスタやオルフェーヴルなどの2着が最高着順で勝利した馬はいません。
昨年もタイトルホルダー、ドウデュース、ステイフーリッシュ、ディープボンドと4頭が挑戦しましたが、最高着順はタイトルホルダーの11着でした。
凱旋門賞勝利は日本馬の悲願といわれて、近年は名だたる日本の名馬たちが挑戦していますが、好走からは遠ざかっています。
凱旋門賞勝利への壁
これまで数々の名馬が挑み跳ね返されてきたパリロンシャン競馬場。欧州の強豪馬たちが出走してくるレースレベルの高さはもちろんですが、他にも日本馬の好走を妨げる多くの障害があります。
①馬場・高低差
荒天が多くパワーが必要な洋芝に極端な高低差、フォルスストレートなど日本馬にとっては適性外な要素が多いです。
パリロンシャンの芝は意外と深くなく、むしろ芝丈は短いという競馬関係者のレポートも聞きますが、水分を含んだ場合に、相当粘着質で重たい馬場になるようです。
それに対応できるスタミナやパワーは求められそうで、スピードや末脚が求められる日本の今の競馬とは性質が異なります。
特に高低差は中山競馬場の倍で、これはアスコット競馬場など欧州の競馬場で日本馬が好走しにくい大きな要因の1つになっていると私は分析しています。
これは、自然の地形をそのまま利用しようと考える欧州的競馬観とフラットなトラックコースで競馬を行う日本的(欧米的)競馬観の違いが根底にあります。
ここ最近の海外遠征で日本馬が結果を出しているコースを振り返ると…
・香港 シャティン競馬場
・韓国 ソウル競馬場
・サウジアラビア キングアブドゥルアジーズ競馬場
・UAE メイダン競馬場
・アメリカ デルマー競馬場
いかがでしょう?これは皆、平坦トラックコースなんです。
海外遠征で最近日本馬が活躍できている=凱旋門賞も勝てる
とはいかないと私は思います。
②斤量
馬場適性などと同時に、日本馬にとって大きな壁になっていると私が考えているのは斤量です。
凱旋門賞は牡馬59.5キロ牝馬58キロと日本では滅多に背負うことがない斤量です。
3歳馬は牡馬56.5キロ牝馬55キロと軽く、軽い斤量を活かして好走する馬が目立ちます。
私は馬券を買う際にはとりあえず戦績は度外視で3歳牝馬は全頭紐に入れるほどです。
ちなみにこれまで3歳牡馬が強すぎて、2017年から3歳牡馬は56.0キロ⇒56.5キロと0.5キロ負担重量が重くなっています。
2022年 10月2日 | イギリス | アルピニスタ | 牝5 | L.モリス | M.プレスコット | 2:35:71 |
2021年 10月3日 | ドイツ | トルカータータッソ | 牡4 | R.ピーチュレク | M.ヴァイス | 2:37:62 |
2020年 10月4日 | フランス | ソットサス | 牡4 | C.デムーロ | JC.ルジェ | 2:39:30 |
2019年 10月6日 | フランス | ヴァルトガイスト | 牡5 | P.ブドー | A.ファーブル | 2:31:97 |
2018年 10月7日 | イギリス | エネイブル | 牝4 | L.デットーリ | J.ゴスデン | 2:29:24 |
2017年 10月1日 | イギリス | エネイブル | 牝3 | L.デットーリ | J.ゴスデン | 2:28:69 |
2016年 10月2日 | アイルランド | ファウンド | 牝4 | R.ムーア | A.オブライエン | 2:23:61 |
2015年 10月4日 | イギリス | ゴールデンホーン | 牡3 | L.デットーリ | J.ゴスデン | 2:27:23 |
2014年 10月5日 | フランス | トレヴ | 牝4 | T.ジャルネ | C.ヘッドマーレック | 2:26:05 |
2013年 10月6日 | フランス | トレヴ | 牝3 | T.ジャルネ | C.ヘッドマーレック | 2:32:04 |
2012年 10月7日 | フランス | ソレミア | 牝4 | O.ペリエ | C.ラフォンパリアス | 2:37:68 |
凱旋門賞の過去10年の結果を並べてみました。
いかがでしょうか?記憶に新しいところで言うと前回開催の2022年は5歳牝馬のアルピニスタが勝利。
2021年〜2019年の3年間は牡馬の古馬が勝利していますが、それ以外は全て3歳馬または牝馬の勝利となっています。(注2016年〜17年はシャンティイ競馬場)
確かにトレヴとエネイブルが怪物だった感もありますが、複勝率などの指標を見ても牝馬はかなり優秀。牝馬優勢は間違いない大きな傾向だと思います。
スルーセブンシーズの勝算は?
ここまで、凱旋門賞について分析を行ってきました。
次に2023年に凱旋門賞に挑戦するスルーセブンシーズの勝算・ストロングポイントについて分析をしていきたいと思います。
①牝馬
なんといってもまずはこれです。
凱旋門賞を勝てるとしたら、3歳馬か牝馬だと僕は思っています。
確かにエネイブルなど怪物牝馬がいたことも数字には影響していますが、それを差し引いても前述の通りこれまで斤量の軽い牝馬の好走は目立っています。
これは素直にプラスと受け取って差し支えないでしょう。
斤量の軽さという点では去年のドウデュースにも期待していたのですが、欧州芝適性がなかったようで好走はできませんでしたね。
②軽い馬体重
これは馬場が雨により重くなりやすいことが要因にあると思うのですが、凱旋門賞は小型馬の活躍も目立ちます。
雨による、スリップが軽い馬の方が少ないことで体勢を崩しにくいというのが理由なのでしょうか?
実際、2022年私もかなり期待していたタイトルホルダーは比較的大柄な馬で、道中は悪くないように見えましたが馬場に脚を取られてか最後の直線では伸びを欠き、11着に沈んでしまいました。
一方、日本遠征馬で凱旋門賞で好走(入線)した馬を並べてみると…
・1999年 エルコンドルパサー2着
・2006年 ディープインパクト(失格)
・2010年 ナカヤマフェスタ2着
・2012年 オルフェーヴル2着
・2013年 オルフェーヴル2着
と、すべて450㎏前後の中型馬なんですよね。
現地で出走時馬体重は測定していないので何キロで出走していたかはわかりませんが、日本での出走歴を見ると概ねどの馬も小型~中型といえると思います。
スルーセブンシーズは440~450キロほどで出走している馬なので、まさにこの好走レンジに当てはまります。
そのうえで過去には稍重の初富士Sや重馬場のミモザ賞でも勝利歴があり、道悪巧者というほどではないと思いますが、パンパンの良馬場以外はNGというタイプでなく力を発揮できているのもプラスでしょう。
③血統
スルーセブンシーズはドリームジャーニ―産駒。
父父はステイゴールドです。ステイゴールドは自身も香港でG1を制しましたし、産駒も海外遠征で活躍する傾向があります。
実際、前述の凱旋門賞で2着に入っているオルフェーヴルやナカヤマフェスタもステイゴールド産駒で、同舞台でも過去に好走実績があります。
本馬は父父と距離が少し離れてしまい、堀田先生の著書の遺伝子学的に考えると50%の50%で受け継いでいる遺伝子は25%となり、この海外適性的な要素をしっかりと受け継いでいるか?定かではありませんが、ポジティブな要素の1つではあるでしょう。
さらに、スタミナが求められるパリロンシャン競馬場の芝2400mコースにおいて、父方に入っているメジロマックイーンというステイヤーの血も活きてくる可能性はあると思います。
父ドリームジャーニーはステイヤーレースの天皇賞春で3着に入ったこともありますし、本馬は2400m以上のコースでの好走実績はありませんが、十分適性を持っている可能性は秘めている血統構成だと思います。
最後に
凱旋門賞で勝つことは並大抵のことではないことは日本の競馬ファンの皆様はご存じだと思います。
スルーセブンシーズのポジティブな要素を並べてみましたが、競走実績的に距離は持つのか?純粋な力比べで欧州の強豪馬たちを打ち負かすことができるのか?など不安点もあります。
実際、現地ブックメーカーのオッズでは人気薄になっていて、現地ファンからはあまり支持されていないようです。
でも、だからこそ、スルーセブンシーズの一発に期待して私は当日応援しようと思います。
グリグリに人気して皆から目標にされるような馬より、ノーマークな馬がするっと勝ってしまうこともあるのが凱旋門賞です。
2021年のトルカータータッソが勝った時の凱旋門賞なんて、まさにそんな感じでしたよね。
現地ファンをぎゃふんといわせる激走を期待して、この記事を締めくくりたいと思います。
有力馬の回避が多く、相手関係も恵まれているチャンスの年だと思いますし、日本の悲願達成の歴史的な1日になることを期待したいですね。
頑張れ、スルーセブンシーズ!!
現役地方&海外馬主・競馬ライター
登録者5000人超え&累計再生250万回超えの一口馬主YouTuber。豪州競馬会員制コミュニティJJ Racing Club 共同代表。社会人1年目から一口馬主を始め、キャロット・シルク・ノルマン・ロード・DMMバヌーシーの5クラブに入会。地方個人共有とRSS や中條厩舎の豪州共有に加え北米MRHでマイクロシェアを行う。血統スタッツや馬体・歩様を重視していて代表馬はトゥルーフェアリー、ロードヴァレンチ、ミスティックロア等。
—最近の私––
Bluetoothでスマホと接続可能なスピーカー。重低音がとても強調されるので洋楽やアップテンポな曲が好きな私のお気に入り。防水機能つきなのでお風呂に持ち込んで音楽を聴きながら本を読むのが毎日の楽しみ。
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