<PON馬券塾バックナンバー>
選ばれし人間だけが立てる舞台
皆さんは口取り式を知っていますか。
口取りとは、勝った馬がウイナーズ・サークルで行う記念撮影のことです。
G1などでは大勢の関係者がターフに並んで口取り式を行っている様子をテレビでご覧になった方もいるでしょう。
基本的に口取り式は誰でも参加できるものではなく、関係者(馬主・調教師・騎手など)しか参加することはできません。
しかし馬主の伝手がなくても参加することはできます。一口馬主クラブで出資馬が勝利すれば、10名まで(重賞は20名)撮影に参加することができるのです。
一口馬主をやっている上で「口取り」は1つの憧れですよね。
昨年の年末、出資馬のシルブロンが3勝クラスのグレイトフルステークスを勝利し、人生初の口取りをしてきました。
今回はその時の思い出を体験談として綴っていきたいと思います。
PONの口取り体験記
口取り式当選は難しい
私は18年産から一口馬主を始めましたので、一口馬主としてのデビュー戦は2020年のこと。7月の函館での新馬戦でした。
「一口馬主としてのデビュー戦はどんな競馬場でも参戦する!」
そういった想いはあったものの、残念ながら2020年の夏といえば新型コロナウイルスにより無観客競馬だった時期。現地参戦の夢は叶いませんでした。
その後も無観客や、人数を制限した競馬開催が続き、口取り式は中止。出資馬の現地観戦すら厳しい指定席抽選を潜り抜ける必要があり、競馬場が大好きな私にとっては苦しい時期でした。
口取りが一口馬主をする上での一つの夢であった私は、出資馬が出るレースにひたすら応募。しかし、これが中々当たらないのです。多数口のクラブでは、最大何千人が応募する可能性がありますので当然です。
そんな中、昨年の年末に大チャンスが。中山大障害(オジュウチョウサン引退レース)があったこの日。中山11Rのグレイトフルステークス(3勝クラス)にシルクの出資馬シルブロン、中山12Rのクリスマスカップ(2勝クラス)にキャロットの出資馬アンクロワが出走することが決まりました。
口取りが当たる確率も単純に2倍だし、どちらも勝つチャンスは十分にある!
結果的にアンクロワの口取りは残念ながら外れてしまったものの、シルブロンの口取りになんと当選しました。
これまで何回も口取り応募しては外れての繰り返しで、こんなの本当に当たるのかよ!?と挫折しかけていたので、初めての当選はそれだけで本当に嬉しかったです。
スーツで競馬場へ
元々競馬は欧州で始まり、紳士淑女の娯楽として楽しまれていました。
そういう経緯もあって口取り式はドレスコードがあり、男性であればスーツ着用の義務があります。
就活の面接終わりにリクルートスーツで競馬場に行って以来、久々にスーツで競馬場に来場しました。競馬場でスーツ姿の観客を見かけたら、就活生か口取り式に当選した人の2択でしょう。
来場してからは本当に落ち着きませんでした。
シルブロンの出走するグレイトフルステークスには京都新聞杯2着で菊花賞にも出走したヴェローナシチー、札幌芝2600mで2連勝をし、こちらも菊花賞に出走したディナースタ、ここ4戦連続連対中のマリノアズラなど、強敵が多くいました。
またシルブロンは右回りがあまり得意ではありませんでした。
※当時までの成績は、左回り(3,2,1,4)、右回り(0,0,0,3)
そういったことが自分を不安にさせ、その度に「大丈夫だ、大丈夫だ…」と自分に言い聞かせ、10R中山大障害のファンファーレが鳴り響きます。
オジュウチョウサンの最後の勇姿に感動し、本命だったマッスルビーチが10番人気4着で悶絶しましたが、自分のメインレースはこれから。感動もつかの間。パドックに直行しました。
パドックではヴェローナシチー、ディナースタ、マリノアズラが本当に強く見えて仕方なかったです。
またもや不安になりましたが、絶対勝ってくれると信じ、緊張の中、口取りの集合場所から1番近く、レースが見やすい場所に移動しました。
レースが始まってからの記憶はあまりないのですが、レースはタガノフィナーレ、ディナースタが引っ張る展開。
シルブロンは10番手あたりで、1番人気ヴェローナシチーをぴったりマークしておりました。道中モリノカンナチャンが捲っていき、「もしかしたら後方に展開が向く!?」と高揚感。
そして最後の直線。ヴェローナシチーが抜け出しにかかると、それを外からシルブロンがはかったかのように差し切り勝利。
信じられませんでした。
しかし、口取りの集合は1位入線後1分以内。これまで経験したことのないような心情で脚を震わせながら、急いで集合場所に向かいました。
ついに念願の人生初口取り
集合場所にはシルクの社員の方と、自分と似たような興奮状態だった他の9名の口取り当選者が待っており、点呼、会員証の提示を済ませた後は、「おめでとうございます」の声と共に『優勝馬撮影参加通行証』を渡されました。
社員の方に「1列に並んでください」と言われたので、整列してウィナーズサークルに向かいました。向かう最中、前にいた方と仲良くなり、「未勝利時代は心配になったけど…」などと、シルブロンの思い出話も花が咲きます。
そしていよいよ、念願の口取り。
ここで嬉しい誤算が発生しました。
初めてなので何も分からないまま、意識せず前から6番目に並んでいたのですが、馬を中心に5名ずつ左右に分かれることになり、自分は1番馬に近い右側に並びました。
すると、なんと自分の隣に勝利騎手であるルメール騎手が並びに来たのです。
ただでさえ幸せなのに、ルメール騎手の隣で撮影できるなんて…
最高のクリスマスイブでした。
肝心の写真撮影なのですが、カメラマンの方が「撮りますよー!」といってすぐ、
普段からテンションが高いシルブロンが軽く暴れ出しました。
慣れていないのでびっくりしたのですが、その際ルメール騎手が「ダイジョウブ…ダイジョウブ…」と呟いていて、安心と同時に少し笑ってしまいました。
そして再び写真撮影に臨もうとしたところカメラマンの「もう撮れました。」
間髪入れずに「それではこちらから退場してください。通行証はこちらで回収します。」
とシルクの方からアナウンスが。
「あ、結構一瞬なんだな…」そう思いながら、ウィナーズサークルから退場し、自分の初めての口取りはこうして幕を閉じました。
その後同じ口取り仲間とシルブロン談義をもっとしたかったのですが、
次のレースで出資馬アンクロワの出走が控えていたので、興奮冷めやらぬままにパドックへと向かいました。
※こちらも一生懸命応援しましたが、結果は4着でした…。
口取り式を経験したがからこそ伝えたいこと
一瞬で終わった口取りでしたが、余韻はしばらく続きました。
写真はデータ版で購入しました。4000円くらいと結構な値段しましたが、購入しない選択肢はなかったです。
「人生で1回は口取りがしたい!」という夢が叶ったのですが、1度口取りしただけでは全く満足しておりません。
今度はもっと大きなレースで口取りがしたいなぁ…、違う馬でも口取りがしたいなぁ…。
口取りへの欲は増すばかりです。
一口馬主が口取り式に参加する手順はスリーステップ。
①現地観戦できる競馬場のレースに出資馬が出走する
②口取り抽選に当選する
③出資馬がレースに勝利する
文字にすると簡単ですが、結構高いハードルなんです。特に③がね。
そんなハードルを初めての口取り当選で超えられた自分は、本当に幸運だったと思います。
色々な方に感謝しなければいけないと感じました。
どうしても口取りをしたい!という方は、
これらのハードルを下げる、抽選のライバルを減らす為に比較的倍率の低い裏開催で応募したり、口数の少ないクラブに入会するのも手かもしれません。
私もこれから何度も抽選に外れるでしょう。
当選しても出資馬が敗れ、失意のままスーツで帰路につくこともあるでしょう。
それでも、人生2回目の口取りに向けて、折れない心で応募をし続けたい。
そう強く決意した人生初の口取り体験でした。
<ライタープロフィール>
競馬予想系YouTube「PON HORSE CLUB」を運営。
江分輪太の弟子。馬券は穴から。
極度の現地観戦主義者で、1年間で競馬場に72回行ったことも。
ヤクルトスワローズ・川崎フロンターレ・大相撲・お笑い芸人・酒を愛する男。
一口馬主はキャロット・シルクに入会中。代表馬はシルブロン・アンクロワなど。
No responses yet