■出世レースとして名高い東スポ杯2歳S
昨年の覇者イクイノックスは先日天皇賞秋を勝利。一昨年のダノンザキッドはホープフルSを勝利。3年前のコントレイルは言わずもがな3冠馬だ。
近年東スポ杯2歳Sは出世レースとしてトレンドになっている。
今年もフェイト、ハーツコンチェルト、ダノントルネードなど前走強い勝ち方で勝利してきた馬たちが出走を予定していて、早くも注目の一戦となっている。
そんな注目の東スポ杯2歳Sを4つのファクターを組み合わせて好走期待馬をピックアップする「コンプレックスアナライズ」を用いて検討を行っていきたい。
今回のファクターは下記の4つ。
・データ①
・データ②
・レースラップ
・血統
■芝1800m以上の勝利経験がものをいう
東スポ杯2歳Sでは芝1800m以上の勝利経験があるというデータが有効だ。過去10年3着以内にきた馬の中でこのデータに該当しなかったのは19年3着ラインベック、16年1着ブレスジャーニー、13年2着プレイアンドリアルの3頭だけ。
このうちラインベックは前走中京2歳Sを、ブレスジャーニーはサウジアラビアRCをそれぞれ勝利しており、OP級の勝ち鞍があるという点で共通している。
従ってOP級の実績がない馬で3着以内に入った馬はプレイアンドリアルだけ。
プレイアンドリアルも盛岡の芝重賞を勝利してきているので全くの実績がなかったというわけではない。
OP級の実績もしくは芝1800以上の勝利経験がない馬は消しとする。
【今年の出走馬で芝1800m以上で勝ちがない馬】
・ジョウショーホープ
・ドゥラエレーデ
・テンカノギジン
・シルバースペード
■前走新馬勝ち、OP級で勝ち負けが優位
過去の出走馬たちの前走は以下の通りだ。
勝ち馬は前走新馬戦かOP級競走から出ている。
特に前走G3出走馬は成績が良く、注目したいローテーションだ。
もう少し前走G3組について深掘りしていくと、勝ち馬3頭はすべて前走G3を勝利してきた馬。2着に入ったアヴニールマルシェにしても前走新潟2歳Sで2着している。
従って連対した4頭はすべて前走も連対していたということになる。
今年は一つ前のデータでも消しに該当したジョウショーホープが前走札幌2歳Sからの臨戦だが、4着であるためこちらのデータでも消しになってしまう。
【今年の前走G3組】
・ジョウショーホープ
→札幌2歳S 4着からの臨戦(×)
前走OP組についても見ていこう。前走OP組からは計10頭が馬券内に入っているが前走着順別で見ていくと下記の通りだ。
複勝圏ということでいえば前走複勝圏が必須条件。しかし、成績を見る限り前走OP組からは連対してきた馬を狙いたい。
今回はタイセイクラージュが萩Sからの臨戦だが、着順は4着ということで消し要素となる。
【今年の前走OP組】
・タイセイクラージュ
→萩S4着からの臨戦(×)
■年によって異なるレース質 今年はラスト3F戦か
過去10年の平均ラップは下記の通り。
12.80 – 11.27 – 11.68 – 12.08 – 12.20 – 12.29 – 11.69 – 11.25 – 11.53 – 11.70
平均ラップで見るとラスト4Fから11秒台を刻んでいるが、東スポ杯2歳Sは年によってラップにかなりばらつきがある。
例えばコントレイルが勝った3年前のレースでは8頭立ての少頭数だったこともありラスト4Fが11.8 – 11.7 – 10.8 – 11.4と推移しておりラスト2Fの瞬発力勝負。
ワグネリアンが勝った17年のレースは前3頭が後続を離して飛ばす特殊な展開だったためその年を除くと、過去10年で2F戦が4回、3F戦が4回、4F戦が1回となっている。
今年は有力馬たちに幼さもあり大味な競馬をしてきていて、瞬発力に特化したタイプでもないのでラスト3Fからレースが動くことが予想される。
ハーツコンチェルトが早めから動けば4Fからのレースとなる可能性もあるが、東京競馬場の2歳戦であることを考えれば3~4コーナー中間から早々にレースが動き始める展開は想像し難い。
3F戦の場合であっても33秒台の上がりは求められるため一定のスピード性能と持続力が必要だ。
■血統解説(フェイト/ハーツコンチェルト/ダノンザタイガー)
・フェイト
ドイツのSライン牝系の一頭で母サンタフェチーフは現役時芝中距離で3勝。
Sライン牝系は高速芝適性が高く、本馬も近親にはサリオスやシュネルマイスターがいる。
父リアルスティールもスピード性能の高い馬だったため本馬も高速芝は得意だろう。
牝系がスタミナ豊富な一族であり、成長力もある。
一方現状の馬体の完成度は決して高いわけでもなく、前走も新潟コースの勝ち時計としては優秀だが今回勝てるだけの確証とまでは至らない。
母サンタフェチーフもそうだったが高速馬場かつ上がりはかかるような展開が最も得意とするレースだと考えられて、後傾ラップ必至の今回はベストなレースとは言えないのではないだろうか。コースにしても東京1800がベストとは思えず、もう少し機動力が要求されるコースが良い。素質の高さでどこまでといったところだろう。
・ハーツコンチェルト
4代母Hum Alongを根幹として欧米日と場所を問わず活躍馬を輩出している牝系の一頭。近親には2歳時にBCジュヴェナイルフィリーズを勝利したStorm Songや秋華賞3着のソフトフルートなどがいる血統。本馬の場合は母ナスノシベリウスが繁殖として非常に優秀でハーツコンチェルト以外の産駒はすべて中央で複数勝利を挙げている。
Unbridled’s Song、Danzig(Pine Bluff)、A.P. Indy、Fappianoと代々スピード性能の高い血がファミリーにつけられてきており、高速芝適性も十分高い。
そこまで早熟ではない一族にハーツクライということで完成はまだ先だが、初戦の内容や血統面からも東京コースは合う。新馬戦はテン1Fで13秒台半ばくらいは要しており、今回も序盤は置いて行かれる可能性がある。勝ち時計に特筆すべき点はなくここを制するためには上積みは必須だが、ポテンシャルは高い一頭だろう。
・ダノンザタイガー
祖母Shandra Smilesが繁殖として優秀でトリプルベンドSなどAWのG1を3勝したSmiling TigerとデルマーデビュータントS(G1・AW7F)を制した本馬の母シーズアタイガーを輩出。早熟性が高く、スピード性能と持続性能に優れたタイプのファミリーだと言えるだろう。
Tale of the Cat(Storm Cat)、Cahill Road(Fapiano/Unbridledの全兄)とこちらもハーツコンチェルト同様にスピード性能の高い米血が代々つけられてきており、高速芝適性も高いだろう。ハーツコンチェルトとの違いでいえばこちらの方が牝系の早熟性が高い分、現状の完成度も高い。前走の内容を見ても急なピッチアップを得意としているというよりは長く良い脚を使うタイプと思えるため東京コースは合っている。
■Cアナライズから導く結論は◎8ハーツコンチェルト
人気2頭が完成度という意味ではそこまで高くなく、穴から入ることも考えたが東スポ杯2歳Sでの穴狙いは過去の傾向から見てもレベルが低い年じゃないと難しい。おそらくハーツコンチェルトとダノンザタイガーは重賞級のポテンシャルを持っているだろうし、フェイトに関してもパフォーマンスこそまだ足りないが血統的なポテンシャルは十分G1級。そう考えると今年穴から入ることは無謀に思えて、上積みも期待しての◎8ハーツコンチェルトとする。
相手には血統解説をした2頭、コンプレックスアナライズを通過した中で距離短縮が良さそうな1ロッククリーク、追走に課題を残すも瞬発力は示した3ガストリックの計4頭。
◎ 8ハーツコンチェルト
○ 3ガストリック
▲ 6ダノンザタイガー
☆ 1ロッククリーク
△ 5フェイト
牝系研究家・競馬ライター
牝系こそがサラブレッドの根幹であると考え、日夜サラブレッドファミリーの研究と最適な配合の追求を行う。競馬予想、血統解説、コラムなどを通じて競馬の魅力を多くの人に伝えることをモットーとしている。SPAIA競馬でも記事連載中。
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