【香港マイル】Cアナライズから浮かび上がるゴールデンシックスティのライバル3頭

■絶対王者か世代交代か 虎視眈々と栄冠を狙う日本勢

12月11日(日)シャティン競馬場では香港国際競争が行われる。香港競馬の下半期総決算となる一日だ。今回はその中から17:00発走予定の香港マイルをコンプレックスアナライズで検討していく。今回用いるファクターは以下の3つ。

・レース傾向を見極める「データ分析」
・力関係を推察する「過去レース評価」
・秘めた能力を解き明かす「血統分析」

■揺るぎない香港勢優勢!

まず最初に押さえておきたいデータは調教国別成績だ。過去5年のデータで見ると香港馬が【4-4-3-23】と圧倒的。健闘しているのは日本馬で【1-1-2-9】。それ以外の国の馬たちは【0-0-0-12】と全く通用していない。香港スプリントでも同様の傾向があって、データレンジを過去10年まで広げたとしてもほとんど変わらない。信頼できるデータと考えて良いだろう。

シャティン競馬場はほぼ平坦なコースで勝ち時計も1分33秒台が中心。欧州調教馬たちは平坦コースとスプリント戦、マイル戦の勝ち時計の速さに中々対応できないという要因が考えられる。

今回はオーストラリアからローズオブインディシーズが出走を予定している。オーストラリア競馬は欧州と比較するとスピードを求められるので、香港、日本以外の国であれば一番好走できる可能性の高い国だと思うが今年もメンバーレベルは高く厳しい戦いとなるだろう。



■レース評価:JCマイル、マイルCS

続いては出走馬の主要なステップレースとなっている香港のジョッキークラブマイルと日本のマイルCSのレース評価を行う。

ジョッキークラブマイル

レースの評価をする前に簡単に上位馬の紹介をする。

1着ゴールデンシックスティは香港マイル界の絶対王者でこれまでG1を6勝。今年に入って2度敗戦をしているが、1度目は馬場と距離、2度目は展開不利と言い訳のできる内容で今回も当然大注目の1頭だ。

2着カリフォルニアスパングルは4歳馬でこれまでの戦績は【8-5-0-0】と連対率100%の安定感。対ゴールデンシックスティでは0勝2敗と負けているが成長力でカバーしたい。

3着ワイククは7歳馬でこれまでこれまで3度香港マイルに出走している。2着→4着→7着と年々成績を落としており年齢を考えてもここからの上積みは見込みづらいがいぶし銀の活躍を見せていて、今年の年明けスチュワーズカップ(G1・芝1600m)では大本命ゴールデンシックスティに勝利。

先行争いが激化することもあるシャティン競馬場のマイルコースだが、今年のジョッキークラブマイルでは少頭数ということもあってかすんなり隊列が決まった。逃げたのは2着馬カリフォルニアスパングル。内目の3番手にワイクク、後方2番手がゴールデンシックスティというポジション取り。

ペースは後傾約3秒程度。かなりのスローペースで上がりの競馬となったため前目のポジションを取っていた2,3着馬に展開利があっただろう。それを大外一気で差し切ったゴールデンシックスティはまさに強いとしか言いようがなく、着差はクビだがそれ以上に後続との力差を感じる。

またこの時ゴールデンシックスティは斤量58キロ、2着カリフォルニアスパングルは56キロと2キロの斤量差があったが今回は同斤量。さらにゴールデンシックスティは約半年間の休み明けであったことも考慮すれば1着2着の逆転は相当難しいと考えるのが妥当だ。

年明けにワイククが勝ったスチュワーズカップもスローペースで縦長の前残りという相当な展開利があった。この2頭の比較でもゴールデンシックスティがかなり上だろう。

マイルCS

続いては日本馬3頭が戦ったマイルCSを見ていこう。

今年のマイルCSのペースは46.6-45.9(後傾0.7秒)で時計面ではスローの流れだが、ファルコニアが早めに1度動いたことや向こう正面向かい風だったことを考えればペースほど先行勢は楽ではなかっただろう。

5着シュネルマイスターは折り合い重視の運びでベストなポジションを確保できず、直線ではエアロロノアにがっつり蓋をされてしまった。その影響もあってか直線では手前が変わらず終いは伸びきれず。ルメール騎手は馬場を敗因として挙げていたが、展開の不利が大きかったように感じる。

11着ダノンスコーピオンはマイルCSの時点では力負けの印象だ。川田騎手はレース後成長に伴って身体のバランスが変わってきていると述べていたがそれが敗因だとするならば果たして3週間で整うのか。ただ一番変わる可能性が高いのはこの馬かもしれない。

14着サリオスに関しては全く進んでいかなかった。今回が引退レースということだが今のサリオスは好調とは言い難い。そんな中での中2週で海外となると昨年好走している舞台とはいえ、かなり調整は難しいように感じる。



■血統解説:ゴールデンシックスティ、カリフォルニアスパングル

ゴールデンシックスティ

父Medaglia d’OroはSadler’s Wellsの系統だがGalileoやMontjeuなんかとはタイプが全く異なる。現役時代は米ダート戦線で早期から活躍しトラヴァーズS(G1・ダート10F)などG1を3勝。産駒も早期から走るタイプが多く、スピードや俊敏性を活かした競馬が得意。海外では本馬を含む芝の活躍馬も多数出ているが日本ではダートが主戦場だ。

牝系は3代母Konafaを根幹として欧米で広がりを見せている。代表馬には仏2000ギニー(G1・芝1600m)などG1を5勝し日本に種牡馬として輸入されたヘクタープロテクター。その他にもG1級は多数でほとんどが芝馬。

母Gaudeamusも愛デビュタントS(G2・芝1400m)を勝利している実績馬だ。この一族はスピード性能の高い芝馬が多いのが特徴。そこに父Medaglia d’Oro、母父がフォーティナイナー産駒のDistorted Humorだから機動力武器の米血芝馬といった感じ。差し馬だがコーナーで自分からレースを動かせるタイプでスローでも取りこぼしの可能性は低いだろう。

カリフォルニアスパングル

父StarspangledbannerはジュライC(芝1200m)などG1を4勝したカルティエ賞最優秀スプリンター。ただ種牡馬としてはジャンロマネ賞(G1・芝10F)勝ちのAristiaや今年のプリンスオブウェールズS(G1・芝1990m)でシャフリヤールに勝利したState of Restを輩出するなど配合次第では距離を持たせることが可能な種牡馬だ。

本馬の牝系は3代母Basileaを根幹としてヨーロッパを中心に広がっている。G1馬こそカリフォルニアスパングルしかいないのでゴールデンシックスティには牝系の活力で劣るが、叔父Shakespearean(父Shamardal)はハンガーフォードS(G2・芝1400m)を勝利。その他にも今年のダーレーS(G3・芝1800m)勝ち馬のAlflailaやナンソープS(G1・芝1000m)で2年連続2着のSainte Marineなどがいる。芝適性が高くスピード性能も高い。瞬発力が優れたタイプは多くないが、一定のスピードで走る持続力が優れている馬が多い一族というイメージで良いだろう。

本馬の場合は母父がHigh Chaparralだから底力があってじわっと切れる。
爆発力があるタイプではなく、展開利がないとゴールデンシックスティとの逆転は難しい。



■ゴールデンシックスティに立ち向かう3頭

香港勢と日本勢の力関係だが昨年のサリオスを物差しにすれば、今年は香港勢優位は揺るぎないだろう。そのサリオスも昨年以上の状態にあるとは思えず、ゴールデンシックスティも7歳とはいえ南半球産だから日本の7歳馬よりは半年若く、今年2敗しているものの衰えは感じない。

あとは相手探しで順当に前哨戦の2着3着をピックアップするが、日本勢で挙げるならシュネルマイスターだろう。ダノンスコーピオンはまだまだこれからの馬なのでいずれこの舞台を制する可能性もあるが、マイルCSの内容からは手が出ない。

◎ゴールデンシックスティ

○カリフォルニアスパングル

▲シュネルマイスター

△ワイクク


貴 シンジ

牝系研究家・競馬ライター

獣医師堀田茂氏に感銘を受け血統の世界へ。馬体と血統は表裏一体であり牝系こそがサラブレッドの根幹であると考え、日夜サラブレッドファミリーの研究を行う牝系研究家。SPAIA競馬でも記事連載中。

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